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悪魔は、娘がどうなろうとなんとも思わなかった。
娘の方は約束通り毎晩屋敷にやって来て悪魔が目覚めるのを待っており、悪魔は泣き続ける娘を穢す。
死に至らしめないのも、娘を毎晩奪う愉しみと自分の快楽のため。
そのため悪魔は、自分が眠っている日中に娘が何をしているかを知らないうえ、興味も持たなかった。
ある日の夕刻、悪魔は目覚めるとすぐに屋敷中を見て娘を探しはじめる。
(珍しくここには居ないようだな…ま、すぐに見つけるさ)
悪魔はこの時間いつも屋敷にいるはずの娘が居ないのに気づくと、娘に分からぬようその身体に付けた印の魔力を辿る事にした。
自分の見た目を人間らしく変え、今はもう暗くなり始めた外へ。
これならば悪魔だと知られることなく、こうして優しそうな笑顔を湛えて声を掛ければ人間達は警戒もせずに寄ってくる。
たまにこうして夜に外へ出て人間の娘を攫っていたため、悪魔にとっては手慣れたものだった。
(この姿も久々だ)
魔力を辿って行くと、小さな店の裏で仕事を終えたばかりの様子の娘を見つける。
(ご苦労なこった。金のために、人間は面倒だな)
捨てられた壊れかけの小さな椅子に疲れ切った様子で座り込んでいる娘を見て、面倒そうに顔をしかめる。
その時。
ふ、と娘が顔を上げこちらを見た。
「…あ…!」
娘がこちらに気づいて声を上げると悪魔は反射的に踵を返し、誰も見ていない建物の影で霧のように姿を消す。
(なんだ?俺だとバレたのか?いや、そんなはずは……あの娘なら、この姿で弄んだなら俺が覚えているはずだ…)
悪魔は平然を装い、屋敷に娘が来るのをいつもの姿で待った。
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