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次の日の夕刻、娘は屋敷のいつもの部屋にいた。
疲れているところを見ると仕事はこなしてから来たらしい。
「知り合いに合わないよう急いで来たのか。よほど知られたくないようだな。次はそいつも閉じ込めて、見せつけてやるのも悪くないかもな?」
悪魔が笑いながら言うと、娘は顔が真っ青になり震え出す。
「お、お願いです…!!特にあの方には知られたくない…どうか…!!」
またしても必死な様子の娘に、悪魔の頭の中にはチラリと嫌な予感がよぎる。
(…なんだこの反応…。俺の化けた姿に会ったことがあるのか…?)
「…ソイツは、お前のなんなんだ?なぜそんなに気にする…?」
落ち着き払ってそう尋ねると、娘は真剣な表情でこう答えた。
「それは……あの方は、恩人なんです……」
「恩人だと!?」
そんなはずはない。悪魔は人助けなどしたことはもちろん無いはずだった。
「何かの間違いだろう…!?」
「いいえ。あの方は…私のたった一人の弟を助けてくれた、私と弟の恩人なんです。…あなたもあの方を見たんですね?…やっぱり私のあんな姿を、あの方に……」
娘はそう言うとベッドに泣き崩れる。
(そんなバカな…この俺が誰かを助けるなんて、あるはずが…!!)
「忘れろ!!ふざけるな、何が恩人だ!胸糞悪い…!!俺に願ったあの願いも、そいつを探すためか!?」
「なん…で……あなたが…?」
もちろん娘には、なぜ悪魔が腹を立てているのかが分からない。
「うるさい!!」
悪魔は怒りのまま娘を組敷く。
「願いなど、聞いてやらなければ良かった!!見殺しにしていれば、こんな訳のわからない思いをせずに済んだんだ!!もういい、お前を殺してやる!」
「!!」
娘に黒い霧が迫る。そしてそのまま娘を覆いつくし、苦しめ続けた。
「わ、私…あの方に…まだ…!お願い…です…!!」
「うるさい!!お前など…!!」
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