夏に願いを

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「東京だったら一発で捕まるよ、田舎を満喫しすぎ」  と僕が言うと、 「まあせっかく田舎に帰ってきたんだから楽しまなきゃな」  と父。  父さんは久しぶりの帰郷にどうやら少し舞い上がっているようだった。  わざわざ有休までとって……  まぁ、この町で生まれこの町で育ったのだから、懐かしさも、嬉しさもあるのだろう。 「ところで手伝うって何を?」  僕が質問を父さんに投げかけると、あきれたように、 「お前なぁ、こっちに来たら足りないものを買いに行った後に、ご近所さんにあいさつに行くって言っておいただろ」  そういわれて僕は、確かにそんなこと言われたなぁ、と思った。  何しろ実家に来てからまだ一晩しか経っていないし、これから一か月もこの町に滞在するわけだからそれなりの準備をしてきた分、荷物はなかなかな大きさと量なのだ。  面倒くさい。  そんな面倒なことをしたら遊ぶ前に疲れちゃうだろう。  それにご近所さんってどこだよ!  一番近くにある家でも歩いて十分と少しかかるわ!  そんなものはご近所さんとは言わない。   いや、言うのか?  いやいや、言わないだろう。  言ったとしても言いたくない。  ここは逃げるが勝ちだな。 「僕、これから友達と遊ぶ約束があるから、行かなきゃ」 「お前こっちでは友達いないだろ」  ばれた、一瞬だった。  さよなら一瞬だけの想像の友達。 「ほら、行くぞ」  そういわれてしぶしぶ車にのる僕。  そして車は近くもないご近所さんのもとへと走り出した。  
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