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第21話 嬉しい誘い
森の中を歩くこと10分。
マリアは少し先を歩いている羊・・・・・・ではなく使い魔のクロを見て言い知れない不安に駆られてた。
(リューさんを信用してないわけじゃない、そういうわけではないけど・・・・・・本当にこの使い魔で大丈夫なのかな? いや、だって、羊なんだよ?)
街でも色々な食材に合わせて食べられている。
普通の使い魔と言えば、ネコ科、イヌ科、鳥類、辺りが平均。 羊の使い魔なんて聞いた事がない。
(まさかリューさん面倒くさがって適当な動物を使い魔として呼んだ・・・・・・いや、それは絶対ないか)
そう思っていれ目の前にスクリーンが出る。
『マリアさん、元気?』
「わっ・・・・・・リーフさん!?」
『今話せる? それとも忙しいかな?』
「だ、大丈夫ですよ」
スクリーン越しにそう言えばリーフが嬉しそうに微笑むのを見て、マリアは少し頬を赤くする。
(宮殿までなら大丈夫だよね、うん。 それにしてもリーフさん変わってない・・・・・・いや何だか少し顔色悪いな、目の下にもうっすら隈が出来てるし)
「顔色悪いですけど大丈夫ですか?」
『実は徹夜明けなんだ、ついさっきまで大事な仕事をしてたから。 ごめん、変に心配させて』
(周りにある書類をやってたのかな・・・・・・だったらかなりの量。 一体何の仕事をしてるんだろう?)
「徹夜したのなら寝た方が良いと思いますけど」
『ん〜、でもマリアさんと話したくて。 そんな事よりマリアさんは、今どこに居るの? ギルド?』
「今は一応任務中で・・・・・・」
『ごめんね、忙しい時に連絡して』
「気にしないでください! 少し心細かった所なので、むしろリーフさんと話せてありがたいですよ」
空は暗い、不気味すぎる森、同行者は羊一匹。
(リーフさんが連絡してきてくれたお陰でほんの少しだけど落ち着いた、恐怖もだいたい薄れてきた)
『今言うのもどうかと思ったんだけど、良かったらまた出掛けない? 大事な話があるんだ』
「本当ですか、嬉しいです!」
『君の笑顔は凄い、見てると幸せになる』
穏やか笑顔を浮かべてそう言うリーフにマリアはますます顔を赤くして固まってしまう。
『また前と同じ場所で会える?』
「は、はい、もちろん!」
『良かった、じゃあ、また・・・・・・大好きだよ』
「えっ!?」
プツッとスクリーンが目の前から消える。
(最後「大好き」って聞こえたような気がしたんだけど気のせいだよね? そうじゃないと有り得ない)
あのリーフさんが好きだなんて。
そう考えてマリアはさらに顔を赤くした。
「なんだ、恋人なのか?」
「な、何言って・・・・・・違うから!」
「だったら好きな奴──こら、触るんじゃねぇ!!」
「クロさんが、からかってくるから仕返し!」
「ガキかてめぇは!?」
そんな事を言いながら歩いていればいつの間にか森を抜けていて目の前には大きな神殿が現れた。
(いや、大きいな・・・・・・って、何か穴空いてない?)
神殿の入口ではなく、その少し上、2メートルくらい上の位置に、大きな大穴が開けられている。
(まさか化け物!? やっぱりこの島には馬鹿みたいに強い生き物がいるんだ! い、いや、たまたま、古ぼけていて崩れたって可能性もある!)
虚勢を張ってみたが、恐怖は拭えず。
震えそうになるのを堪えながら1歩を踏み出せばクロが破壊された神殿を見てから溜息をついた。
「この壊し方・・・・・・あの白髪野郎、敵と会ったな」
「白髪野郎ってレイさんの事?」
「たまーになる突発的な怒り、って訳でもなさそうだから、なにか敵が居たんだろうな。 多分」
「壊し方で分かるんだ」
そう言えばクロは「ああ」と言った。
どうやら、レイの壊し方には2種類あるらしい。
1つ目は突発的な怒りが原因で物を壊す時。
いつ、どこで、どんなタイミングで、どれくらいの威力か分からないが、その怒りが原因の時は少なくとも30メートル前後の穴があいてるらしい。
2つ目は敵などに遭遇して攻撃する時。
まずは様子見もとい牽制で攻撃する時に外れた場合は、だいたい、この宮殿にあいた穴と同じ10メートルほどの穴があくことが度々あるらしい。
(・・・・・・というか、壊し方で敵と遭遇したかどうか判断されるって凄いな。 私はまだまだみたい)
「さ、行くぞ」
「はあ・・・・・・化け物居ないと良いけど」
何度目かの溜息をつきながらマリアはさっさと中に行ってしまうクロの後を急いで追い掛けた。
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