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第11話 暖かな胸
すっかり夜も更けた頃。
「おお! 凄いです、プロみたいでした!!」
「キャンプなんて日常茶飯事ですからレイやマスターと一緒に来る時はいつも張っているんですよ」
テントをほぼ1人で建てたリューに、マリアは拍手を送りながら微笑んだ。
「リューさんは何でも出来るんですね」
「・・・・・・ふふっ、そんな事はありませんよ」
優しく頭を撫でられて思わず笑みを浮かべれば後ろからグイッと首根っこを掴まれて身体が浮く。
「場所決めするから入るぞ」
「はい」
「ちょっ、離して下さいよ!!」
猫でも持つように持たれたまま中に入ればいつの間にかレイが入っててウトウト眠そうにしてた。
マスターはレイの頬を軽く叩きながら言う。
「おい、どこで寝る」
「・・・・・・右端・・・・・・リューの隣」
「右から、レイ、リュー、新人、俺、で良いな?」
言われた通りに寝っ転がれば思いの外に心地好く自然と瞼が重くなっていきそのまま眠りについた。
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それからどのくらい眠っていたのか。
ふと目を覚ましたマリアは他の3人を起こさないように外に出ると大きく息を吸い込んだ。
(綺麗な空気・・・・・・悪魔の楽園に入らなければマスターやリューさんやレイさんに出会わなければ1度すらも来る事がなかった山脈なんだよね)
「おい、何やってるんだ」
「マスターさん・・・・・・起こしました?」
「誰かが身動ぎしただけでリューが気付くのに俺が分からない訳がないだろう。 で、どうした?」
マリアの隣に腰掛けたマスターは同じように綺麗な星空を眺めながら、いつも通りに問い掛けた。
「マスターさん達と居ると別れづらいです」
「・・・・・・どこか行くのか?」
「今すぐじゃないですけど私は私のやる事を終えたらお母さんの所に戻りますから少し寂しいなって」
(今から考えたってどうしようもないけど、やっぱり少し寂しい・・・・・・楽しい分それ以上に悲しい)
マスターは空から目を離さずに言った。
「居れば良いだろ、ずっと」
「でも、」
「俺達と居るのが楽しいなら居るべきだ」
さも当然とばかりに紡がれる言葉にマリアは笑みを浮かべながら「ふふふ」と小さな声で笑った。
「ありがとうございます、マスターさん」
「礼はいらない、早く寝るぞ」
「はい」
ポンポンと髪を撫でられてマリアは少し暖かくなった胸に手を当てながらテントに戻って行く。
この時のマリアはまだ知らない。
起きた時に半裸のマスターが居ることを──。
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