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第14話 お誘い
ギルドに帰れば面白いくらいに歓迎されてマリアは苦笑いを浮かべながらコソッと部屋に戻った。
(リューさんとレイさん、強かったなぁ・・・・・・。)
確かに怖かったがそれ以前に圧倒的な強さ。
笑みを浮かべられるほどの余裕があるって事はまだ本気をだしてないという事だ、つまりあれ以上の実力を2人は持っているという事になる。
(私は魔力も少ないし、力も弱い、私に出来る事と言えば、ちょっとした精霊を呼び出せる程度)
「ローカル、出て来て」
そう言えば真っ暗な部屋に小さな明かりのようなものが集まってきて小さな妖精の姿を形作る。
「久しぶりじゃないの、マリア」
「実は相談があるんだけど・・・・・・その良かったら時間がある時にでも練習に付き合ってくれない?」
「練習?」
「精霊の能力は使い手の実力でしょ、つまり私が強くなればそれだけ精霊は強くなってく。 だから練習をしてみたいの、時間が空いた時で良いから!」
お願い、とマリアは手を合わせた。
ローカルと呼ばれた妖精はヒラヒラと宙を舞いふんっと鼻を鳴らしてマリアに背を向けて言った。
「仕方ないわね、良いわよ」
「本当!? ありがとう、ローカル!!!」
「もう帰る」
それだけ言ってローカルは消えていきマリアはもう一度小さな声で「ありがとう」とお礼を言った。
そしてふとある事を思い出した。
(リーフさんに連絡した方が良いかな、もしかしたら気にかけて・・・・・・いや、でも挨拶代わりにそう言っただけかもしれないし、この時間は迷惑かな)
悶々と考えながら空気をなぞればどこからかスクリーンのような物が現れマリアが驚いていれば、
「えっと、これで良いのかな、マリアさん?」
スクリーンの先に見覚えのある若葉色の髪をした青年の姿が見えてマリアは思わず目を見開いた。
「・・・・・・リーフさん!?」
「電話してくれなくて寂しかったよ。 だから友達に手伝ってもらって連絡したけど迷惑だった?」
「い、いえいえ! 嬉しいです!!」
良かった、と安心したように微笑むリーフの姿は不思議と安心するもので自然と身体の力が抜けた。
(どうやってるのかな、このスクリーン? 魔法に思えるけど通話出来る魔法・・・・・・うん、今度調べてみよう。 便利そうだし、かなり使えそうだ)
「マリアさん、もしだけど。 もし僕が帰ってから君の事をずっと考えてたって言ったらどうする?」
「えっ・・・・・・」
「やっぱり怖いよね、会ったばかりの他人にそんな事を言われても困るか・・・・・・ごめんね、忘れて?」
「いえ、私も任務さえなければきっとリーフさんの事を考えてたと思います、印象に残りましたから」
一瞬驚いたようにした後で嬉しそうに微笑むリーフの姿にドクンと心臓が跳ねたような気がした。
(やっぱりリーフさんってカッコ良いな・・・・・・)
そう思っていればスクリーンの向かい側に居たリーフが、急いだ様子で机らしき場所を探っていて、取り出したのはカレンダーのような物だった。
「明後日なら行けるか・・・・・・あの、明後日とか予定空いてる、かな? 良かったら一緒に出掛けたい」
「わ、私と?」
「ふふっ、他に誰か居るの?」
楽しそうに微笑む姿に釣られて笑みを浮かべる。
(確か今回は頑張ったから3日くらいはマスターが休みをくれたんだよね・・・・・・本当は特訓しようと思ってたけどリーフさんと出掛けても良いか)
「明後日、迎えに行くよ。 待ち合わせは?」
「広場の噴水はどうですか?」
「分かった、君に似合うような服を着てくるよ」
「そんな! リーフさんはどんな服を着てもモデル並にカッコ良いですよ、私の方が頑張らないと!」
少しして自分の言った言葉を思い返してマリアは顔を真っ赤に染めながら「すみません」と謝る。
だが、リーフは頬を少し赤くしながら言った。
「その・・・・・・ありがとう、嬉しい」
恥ずかしそうな、嬉しそうな、そんな表情のリーフにボンッとマリアの顔が噴火寸前まで赤くなる。
「あ、あの! じゃあ、また明後日!!」
「じゃあ」
柔らかな笑顔と共にスクリーンが消えていく。
(はぁぁ〜〜、緊張した! マスターさん達と話す時は緊張しないのにな・・・・・・やっぱり初対面だからかな? それに絶対顔真っ赤だったよね!?)
込み上げてくる恥ずかしさを堪えながらベッドに横になれば下から騒がしい声が聞こえてくる。
どうやらパーティーのクライマックスらしい。
(騒がしいけど落ち着くなぁ・・・・・・なんだか家に居る気分になる、暖かくて愛情に溢れている家)
目を閉じて浮かんでくるのは母が誕生日にだけやってくれた小さな2人だけのパーティー。
どんなに天気が悪くても。
どんなに体調が悪くても。
誕生日だけはいつも祝ってくれた、そして誕生日の時だけ素直に子供のように甘える事が出来た。
「貴方は少し真面目過ぎるのよ、たまには母親に世話をさせてくれないと。 我儘言ったり、文句を言ったりして、私を困らせても良いんだから」
いつの誕生日だったかそんな事を言われた。
(お母さん、大丈夫かな・・・・・・今度、近くで任務があった時にでも少し様子を見に行く事にしよう)
そう思いながらマリアはそっと瞼を閉じた。
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