第15話 浮き立つ心

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第15話 浮き立つ心

今日の朝は誰に起こされる事もなく起きられたというのにマリアは朝から浮かない顔をしていた。 その理由は、 「えっ、デート!!!?」 「し、シー! それにデートじゃなくて、ただのお出掛けというか・・・・・・散歩みたいなものですよ!」 そう昨夜リーフから受けたお誘いである。 (前居た所ではお母さんと一緒に居る事が多かったから友達なんか居なかったし、男性と出掛けるなんて絶対に有り得なかったからな・・・・・・。) つまり出掛ける時の服装が分からないのだ。 そんな時にリタに声を掛けられて、ギルド内でも特に美人なのだから、聞こうと思い冒頭に至る。 「ごめんなさい、マリアちゃんは純粋そうだからまさかそんな事聞いてくると思ってなかったの」 「い、今までは遊びとか行けませんでしたから」 マリアが顔を赤くしながら小さな声で言えばリタはふふっと笑うと「付いてきて」と歩いて行く。 (なんだろう・・・・・・?) 不思議に思いながら後を付いていく内に辿り着いたのは2階の一番左端にある部屋の前だった。 「さ、入って」 言われるがまま中に入り思わず目を見開く。 部屋の中には数え切れないほどの沢山の服があって種類は、ドレスから、カジュアルなズボン、などまで色々とあってマリアは瞳を輝かせた。 (見た事がない服が沢山・・・・・・凄いっ!!) 柔らかな布、硬めの布、本当に全部揃ってる。 「マリアちゃんは綺麗系も似合いそうなんだけどやっぱり可愛い系が良いのかな? うーん、ボーイッシュな格好も似合いそうだし・・・・・・悩む」 あれでもないこれでもない、と服を手に取っては戻してくリタの姿に思わず自然と笑みが漏れる。 (なんだか、お姉ちゃんを持った気分だな) 「とりあえず試着してみて!」 沢山の服を押し付けられてマリアは困ったような笑顔を浮かべながらも試着室へと入って行く。 初めに着た服は少し露出が多めの服装だった。 ノースリーブの花柄ワンピ。 (これは少し恥ずかしい・・・・・・かな) スースーする肩を軽く擦りながら試着室を出ればリタが「わぁ」と小さく声を上げて見つめてくる。 「こういう服ってあざといって言われる事が多いんだけどマリアちゃんは似合ってる! 可愛いし、少し恥ずかしそうにしてる所がさらに可愛い!」 「そ、そうかな・・・・・・褒め過ぎじゃない?」 「そんな事はないって、ほら次!」 再び試着室に押し込まれてマリアは息を吐いた。 次に着るのはどうやらこれらしい。 ラベンダーのカーディガン、レトロ柄台形ミニ、そして服装に合ってる紫色の手持ちのバック。 (これも何だか恥ずかしい・・・・・・うん、やっぱり着慣れない服を着ると似合わないし、落ち着かない) そう思ったが、 「これも似合うよ! 可愛い、最高!!」 「さっきと同じ感想・・・・・・」 「本当にどれも可愛いんだって!」 次々と服を着替えさせられては「可愛い」とか「最高」だと言われて、その度にマリアは首を傾げた。 (可愛いとか分からないな・・・・・・私は自分を普通だと思ってるし、それ以上でも以下でもないのにリューさんやリーフさんは可愛いって言ってくる) 「お母さんは普段の貴方が一番可愛いと思う」 不意に脳裏にその言葉が過ぎった。 少しだけカジュアルな服がないかとマリアが問いかければリタは嬉しそうに沢山用意してくれた。 そしてその中から1着だけ選んで着替えれば、 「わぁ、似合ってる! マリアちゃんの可愛い所も清楚な所も兼ね合わせていて・・・・・・やっぱり自分で選んだ方が良いか、ごめんね、付き合わせて」 「いえ! 色々な服を着れて楽しかったです」 そう思っていればノックも無しにガチャと部屋の扉が開けられ見覚えのある男が中に入って来た。 (うっ・・・・・・なんでマスターさんが、ここに) 「その顔を止めろ」 むにっと頬を掴まれたかと思えば左右に遠慮なく引っ張られたが、しばらくしてから離される。 「で、何してるんだ? 出掛けるのか?」 「マリアちゃんが明日デートだって言うから明日の服を選んでたんですよ、似合っているでしょう?」 「デート・・・・・・ねぇ」 感情の籠っていない黒色の瞳と目が合う。 上から下までじっくり見たかと思えば大きな手でマリアの頬を掴みしみじみした様子で言った。 「お子様とデートする物好きが居たのか」 (本当に、この、マスターさんは・・・・・・!) ふつふつと湧き上がってくる怒りを抑えていればマスターは「じゃあな」とだけ言って出て行った。 (な、何の為に来たんですか、マスターさん!?) 特に何も取って行ってない所から見るに、ただ単に怒らせに来ただけなのかとマリアが考えていれば出していた服を元に戻しながらリタが言う。 「マスターは心配してたのよ」 「心配?」 「昨日パーティーに参加せずに部屋に戻ったからずっと気にかけていて、だから元気そうなマリアちゃんを見て安心したからあんな事言ったのよ」 (えっ、分かりづらい! それに安心したからって何で嫌味!? 普通に言えば嬉しいのに!!) ますます意味が分からなくなったマリアだったが心配された事は素直に嬉しかったり・・・・・・? 心を踊らせながらマリアは柔らかく微笑んだ。
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