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第18話 過去の思い出
今から10年ほど前のことだ。
悪魔の楽園が設立されてから、そう時間が経っていない時に2人の子供がやって来た。
「このイケメンがリューグナー、こっちの暗くて俯いてんのがレイ。 ほら、さっさと挨拶をしろ!」
そう言われて先に前に出たのはリューで金色の髪を耳に掛け直しながら口元に笑みを浮かべた。
「初めましてリューグナーです、魔法は開花したばかりで上手く制御が出来ません・・・・・・なのでギルドの皆さんには色々お世話になるかと思います」
柔らかく微笑むその姿はとても美しくて思わずギルド面々は男女問わずうっとり見惚れてしまう。
その時の事だった。
「・・・・・・お前、邪魔だな」
「はい?」
ずっと黙り込んでいたレイは聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟くとリューに近付いて行く。
「・・・・・・ウザイ」
そう言うと同時にまるで火山が噴火するようにしてレイの足元から真っ白な炎が吹き出してきた。
「・・・・・・こんな炎は俺には効かない」
埃を払うようにして服を叩きながら炎を通って目の前に来るなり、リューの首を乱暴に掴んだ。
しばらくして腰辺りにある毛先が燃やされているのが分かり後退ろうとしたが、首を掴まれているせいで身動きが取れずリューが死を悟った時、
「・・・・・・このくらいか」
「っ、はっ?」
パッと首に触れていた手が離れる。
意味が分からないとでも言いたげに首を傾げているリューを見てレイは溜息混じりに言った。
「髪・・・・・・ウザかった」
「はい? か、髪?」
「長いと炎を思う存分に使えないだろうしな」
「その為に燃やしたんですか?」
「? 他に何がある?」
当たり前じゃないか、とでも言いたげに顔を顰めていてその場に居た全員が心の中で突っ込んだ。
(((分かりづらっ!!!!!)))
ギルドの面々が頭を抱えている中で髪を一部だけ燃やされてしまったリューは、顔を俯かせて肩を震わせたかと思えば、顔を上げて大笑いをした。
「ふっ・・・・・・あはははっ! てっきりわざと煽って来ているのかと思ったのに・・・・・・髪だなんて!!」
「変な事でも言ったか」
「いえいえ、何でもありませんよ。 あの、マスター、良かったらレイと私を組ませてくれませんか?」
その要望にマスターは少し考えてから、
「まぁ、良いが」
「ありがとうございます、マスター」
これが2人をタッグを組んだ理由である。
だが会ったばかりの2人がタッグを組んで上手くいく訳もなく波乱の毎日を送る事になったのだ。
レイの炎で部屋が燃える事が3回、レイの炎でギルドが燃える事が2回、そしてレイの炎とリューの炎で燃やした物の回数が数え切れないほど。
しかもそれは一日目での話だ。
初めてだからと目を瞑っていたマスターも流石にそれが1週間も続けば我慢が出来なくなっていた。
「マスター、俺の服が燃やされました!」
「新しいのを買え」
「マスター! 2人が商店街で暴れたせいで請求書がうちに届いてます、信じられない額ですよ!!」
「無視しろ」
「マ、マスター! 2人が山を破壊してます!!」
「・・・・・・分かった」
完全に堪忍袋の緒が切れたマスターは低い声でそう呟くと2人が破壊している山へと向かった。
もしかしたら殺られるんじゃないかと心配していたが、怪我一つ負わずに2人を連れて帰ってきたのを見てギルドの面々は静かに心に決めたのだ。
絶対にマスターを怒らせないようにしよう、と。
そして拳骨をされて連れて帰られた2人は現在進行形でマスターの部屋で正座して頭を下げていた。
そう怒られると思っていたのだが、
「お前ら2人とも今日は俺と寝ろ、命令だ」
「えっ・・・・・・理由を聞いても?」
急な命令に驚きながらもリューが問いかければマスターは床にゴロッと寝っ転がりながら言った。
「俺がそうしたいから、早く来い」
隣に来るように施されてリューとレイは困ったように眉を寄せながらも、悪いと思っては居るために断る事が出来ずに言われた通り寝っ転がった。
リューは右に。
レイは左に。
両方に腕枕をした状態で眠りに入ったマスターを見てリューは身体を横向きにして目を瞑った。
「レイ」
「・・・・・・なんだ」
「今日はすみませんでした」
「・・・・・・別に良い」
「ここは自分も悪かったって言う所では?」
「俺は悪くない」
「貴方の変な所で真面目な所が好きです」
「・・・・・・お前のそういう所が苦手だ」
「1つくらい私の好きな所があるでしょう?」
「顔だな」
「酷い事言いますね」
「他に良い所があるのか」
そんな会話を続けている内に2人共にもう一度拳骨が落ちて「早く寝ろ」と言われるまで後5分。
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