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第5話 面白い化け物
階段を降りていけばカウンターの席に二人で座り何やら話している二人の姿があった。
(昨日は色々あって気付かなかったけどレイさんの髪って白色なんだな・・・・・・確か雪女族が真っ白だとは聞いたけど雪女族なのかな?)
そんな事を思いながら見ていれば視線に気が付いたらしいリューが手を降ってくる。
「お、遅れてすみません!」
それに気付いて急いで駆け寄りマリアが頭を下げればにこやかにリューが微笑んだ。
「気にしないで下さい、お陰様でゆっくり話す事が出来たので嬉しいですよ。 ね、レイ?」
「・・・・・・任務」
「ああ、任務はコレです」
差し出された紙を受け取り目を通してみる。
《ランクE。 いつもいつも畑を荒らしに来る猿の群れを退治すること、報酬金貨1枚》
説明しよう。
この世界での金貨1枚は1000円だ、
銅貨は1枚100円、銀貨が1000円、金貨が1万円という事になり、大金貨が10万円になる。
(そう言えば昨日どこかの畑が荒らされたとかなんとか言ってる人が何人か居たような)
「改めて自己紹介しておきましょうか」
そう言うとリューはこほんと咳払いをするとにっこり笑みを浮かべながら言った。
「私はリューグナー、ギルド以外の人達からは光の魔導師なんて呼ばれていますけど、対した事は出来ないので戦いはレイに任せてます」
「こちらはレイ。 ギルド以外の人達からは闇の魔導師と呼ばれていて恐れられてますが怒らせない限り穏やかなので安心して下さい」
「・・・・・・宜しく」
「よ、宜しく、お願いします!」
差し出された手を握って僅かに驚いた。
もちろん、差し出されたということ自体にも驚いたがそれよりも驚いた事があった。
──手が氷のように冷たいのだ。
まるで血が通ってない人間のような冷たさに皆が彼等を化け物だと呼んでいる意味が少しだけ、ほんの少し分かったような気がした。
「レイの手は冷たいでしょう?」
確かに、冷たい。
(でも──)
「はい、でも手が冷たい人は心が暖かい人だと言いますからね。 レイさんはあまり顔に出ないだけで本当は優しい人なのかもしれません」
ピクッと握っていたレイの手が震える。
「ふふふっ、そうなんですよ。 レイはほんの少し不器用なだけで本当は優し──っ!」
「・・・・・・黙れ」
「く、口より先に手が出る癖は止めて下さい」
殴られた腹を押さえながらそう言う姿がなんだか面白くてマリアはくすくすと笑った。
(化け物だって言われているから緊張していたけどなんか損したな・・・・・・こうやって一緒に行動するってなったら面白い人達に見える)
「マリアさんは変な人ですね、ギルドの人達は私達を問題児だって言うのに面白いなんて」
「え、心の中が読めるんですか!?」
「レイと居れば読めるようになりますよ」
にこと微笑んだリューは隣に居るレイを見ながら苦笑い気味に微笑むと椅子から降りた。
そして依頼の書いてある紙を服のポケットに入れるとマリアは「任務行きますよ」と言っているリューの背中を追い掛けて外へ向かう。
ドアから1歩を踏み出そうとした時、
──背後から首根っこを掴まれてしまった。
「リュー、レイ・・・・・・とても大事な事を忘れていないか? お前もギルドの掟見てないのか」
背後に居たのはマスターでマリアは昨日の夜飲んでいて掟を読んでいない事に気付く。
(な、何か、大事な事書いてあったのかな?)
自由なギルドだからてっきりないと思った。
違う意味でドキドキする心臓を押さえてればリューが思い出したように「ああ」と手を叩き隣を歩いていたレイを引き摺り近付いた。
そして、
「マスター、行ってきます」
と、満面の笑みで言った。
(ああ・・・・・・もしかして、任務に行く時はマスターに挨拶をしてから行くのが掟なのかな?)
マスターはリューの言葉に満足そうに微笑みぐしゃぐしゃと黒色の髪を撫で付ける。
「おう、気を付けろよ、リュー。 レイは?」
「・・・・・・きます」
「ハッキリ言わないとハグするぞ」
「・・・・・・行って、きます」
少し眉を寄せながらそう言ったレイは寝癖のついた髪をさらにかき混ぜられ溜息をつく。
そしてマスターの視線がマリアに移る。
(やっぱり私もか・・・・・・。)
「え、っと、マスターさん、行ってきます!」
目を合わせながら言うのさ少し気恥しいなと思いながらもマリアは二人のように言った。
「ああ、頑張ってこいよ、新人」
地面に降ろされたかと思えばくしゃくしゃと髪を撫でられてマリアは困ったように笑う。
(掟を早く読むようにしないと)
きっと変で面白い掟が沢山あるんだろうなと心の中で笑いながらマリアはリューとレイと一緒に初任務のEランク任務へと向かった。
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