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第7話 メイド服マリア!
「マ、マスターさん、本当にやるんですか?」
「昨夜また酔っ払って俺にしがみついて甘えて来た事をバラしても良いなら止めても良いぞ」
「ぐっ・・・・・・や、やりますよ」
弱みを握られていては何も出来ず、羞恥心を噛み締めながらマリアは更衣室から出る。
頭の上にはホワイトブリムが乗せられており服装は典型的なよくあるフリフリのメイドの服。
露出が多くスカートなんて膝にすらも届いてない。
「マスターさんって変態だったんですね」
冷めたような目をしながらマリアは言った。
「それは潜入する時とかの衣装だよ、趣味とか罰ゲームで使った事はなかったが・・・・・・そこまで恥じらうお前を見るのは少し楽しいな」
全身を見ながらニヤニヤ笑ってるマスターに殴り掛かりたくなるのをなんとか堪える。
(今の所私が酔っ払って・・・・・・その、甘えると気付いてるのはマスターさんだけ。 他の人にはバレたくないし、やるしかないよね〜)
小さく溜息をついていればマスターに近くに来るように言われてマリアはそっと近付く。
「メイドさんは俺に御奉仕してくれるよな?」
「は、はい、マスターさん」
「その呼び方はないだろ、メ・イ・ドさん」
メイドの方を強調して言われればマスターが何を言おうとしてるのか分かり口を閉じる。
そして、スカートの両端を少し上げて、
「ご、ご主人様・・・・・・っ、本当に変態ですね」
「俺に変なイメージを付けるな、それより早く中に入って来い。 つまらないじゃないか」
犬を追い払うようにしっしっと手を払う姿に怒りを募らせながらも、マリアは2階に上がり、左奥にある部屋へと移動して軽く扉を叩く。
中からガタッと小さな物音がしてから足音が近付いてきて「誰です?」と声が掛かった。
そしてそれと同時に扉が開けられる。
「ああ、マリアさ──ん? その聞きにくいんですけど・・・・・・どうしたんです、その格好?」
「に、似合うかなー、と思って」
「似合ってますよ、凄く可愛らしいです」
爽やかな天使スマイルを浮かべながら言われマリアは顔を真っ赤にしてから扉を閉める。
「大丈夫ですか、マリアさん?」
「は、はい、大丈夫です!」
(無理無理無理・・・・・・! あの天使スマイルは卑怯だな〜、太陽みたいに眩しいんだから)
あの笑顔を浮かべられたら声掛けられない。
実は昨夜マリアは事故でお酒を飲んでしまいその時にポロッとマスターに「あの二人の事を知りたい」と少し零してしまったらしいのだ。
それなら色仕掛けが1番だろう、とマスターに言われてこんな格好で2人に誘いに来た。
だが、リューの天使スマイルには敗北。
次に隣の部屋の扉を叩けばゆったりと足音が近付いてくるのが分かり思わず身構える。
(絶対に嫌な顔をされる! 昨日の今日で何をしてるんだ、みたいな哀れんだ顔をされる!)
「・・・・・・服」
「き、着てみたんですけど似合ってますか?」
「・・・・・・俺に聞くのか」
(ですよね〜、興味なさそうですもん!)
一応聞いては見てみたがやっぱりそんなものかと溜息をつけばグッと顔が寄せられる。
「俺には、よく、分からないが・・・・・・」
「ちょっ、レイさん! 近いですよ!?」
「・・・・・・お前が着たら似合う、と思ってる」
鼻先が触れ合いそうなほどの距離で言われてボンッと顔が音を立てそうなほど熱くなる。
人間の速さと思えないスピードで急いで頭を下げると、マリアは様子を見に来たマスターを押し退けてギルドの外へ行こうとしたが、
──がっちりと首根っこを掴まれた。
「どうした、イジメられたか?」
「いえ、そんな事ないんです。 なんというかあの2人がカッコ良すぎて話せませんでした」
「だろう? 毎回女が入ったらやってるんだが大抵の奴らは似たような事を言っている」
「毎回やってるんですか・・・・・・?」
どれだけ変な人なんだとマリアは溜息をつき更衣室に入ろうとしたら手首を掴まれた。
(え、何か嫌な予感がする、とても嫌な予感)
「せっかく着たんだから働いてくれ」
「嫌です」
即答。
この答えに流石にマスターも驚いたのか目を見開いてから溜息をつきマリアの頬を掴む。
そして左右に引っ張りながら言った。
「マスター命令」
(このマスターさんは・・・! 元々私を働かせる為に着せたのか、この凄く恥ずかしい服を!)
確かにこのギルドは男性ばかりだから少女がメイド服で働いていれば癒される。
初めからそう言えば良いのにと溜息をついた。
「可愛いメイドが働いてたら癒されるよな〜」
(確かに皆疲れてそうだよね・・・・・・私のメイド格好だけで気休めになるなら嬉しいかも)
「任務ばかりで疲れているギルドメンバー達はきっと大喜びだ、胸がないのは残念だけどな」
「コンプレックスを言わないでくれます!?」
そしてトドメと言いたげにマスターは言う。
「働いてくれたらあの事忘れるかもな〜」
思わずマリアは文句を言おうとしたが何とか耐えてスカートの端を掴み笑みを浮かべる。
「了解しました。 ご、ご主人様・・・・・・。」
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