ギャンブルの帝王はニヒリスト

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 殊に気まぐれを起こしてテレキネシスによって美女を目の前に呼んだ日には、愕然とし悄然とし傷心してしまうのだ。何しろ、お父さんはチビ、ハゲ、デブ、この持てない要素が三拍子そろっているから仮令、美女が表面上、優しそうに微笑んでいても自分を愚弄する心の内が手に取るように分かってしまうのだから然もありなん。  剰え仲間と信じていた者たちも勘所になると、知ったかぶりをしたりはぐらかしたり茶を濁したりして嘘をつくし、誰も自分の人格や才能について理解してくれない所へ持って来て親友と思っていた者ですら似たようなものだから到頭、お父さんは人間嫌いが高じて自分の部屋に引き籠るようになってしまった。  そんなお父さんをお母さんは無情にも見捨てて実家へ帰ってしまった。糅てて加えてお父さんは会社を首になってしまった。さあ、どうすると僕はお父さんを見守っていると、何でこんなことに今まで気づかなかったんだろうとお父さんは漸う閃いて一大決心をし、すっくと立ちあがった。その勢いでカジノへ出かけた。勿論、テレパシーとテレキネシスで以て一儲けしようというのだ。で、ルーレットをやれば、ボールを自由自在に操れてペットを行った時に自分が選んでおいた番号のポケットに落とせるし、ブラックジャックをやれば、参加者の心が読めて誰がどんなカードを持っているのかも読めるから思惑通り大儲けして宛らドル箱を両脇に抱えるように意気揚々と帰って来た。
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