ギャンブルの帝王はニヒリスト

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 人が休んでいる時も時間を惜しんで陰で努力をする。お父さんはそういうタイプだから人知れず何かに励み進歩する。だからその概要を具体的に説明しようがないが、抽象的に言えば、血の滲むような努力をして孜々として精進を重ねた結果、遂に超能力を身に着けた。テレパシーとテレキネシスだ。で、皮肉なことに人間嫌いになってしまった。何でかと言うと、大人の言う事の大半が本音ではなく建前であり事実ではなく虚構であることが分かったし、歓心を買おうとする者は誣言詭弁を弄して偽装したり美辞麗句で装飾したりして歯の浮くような綺麗事を平気で濫用し相手も綺麗事で返し予定調和な和み合いをすることも分かったし、彼らの誉め言葉は心にもない口先だけのお世辞や外交辞令であることも分かったし、作り笑顔で体裁を整え巧言令色を駆使する者たちに誠意なぞ微塵もないことも分かったし、空気を読んで同調する者たちは口三味線を弾いたり二枚舌を使ったりしてその場しのぎの調子の良いことを並べ立てることも分かったし、腹を割って話す者は皆無に等しく本心を韜晦して噯気(おくび)にも出さず遣り過ごす者ばかりであることも分かったし、その所為で皆、上滑りになり枝葉末節にしか触れず本質をまるで見抜けず皮相浅薄であることも分かったからだ。
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