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「朝ですよ。起きてください」
「え?」
耳元でそう囁かれ、和正は瞼を開いた。
にっこり微笑んでいるのは、祐也だ。
「お客様、上映が終わりました」
「あ、あぁ~。しまった!」
星降る夜に抱かれて、またもやぐっすり眠っていた。
「お仕事帰りですか? お疲れでしょうから、仕方がないですよ」
「そう言ってもらえると、罪悪感が少しは和らぐよ」
しかし、せっかくの美声を楽しみにしてきたのに、これでは残念すぎる。
「清水くん、何時上がり?」
「え? 20時ですけど」
「よかったら、夕食一緒にどう? 訊きたいこともあるし」
「えっと、あの。その……」
「下心なんて、ないから」
その言葉に少し笑った後、祐也はOKの返事を出した。
ビルの南口で待ってる、という男性に、祐也は好意を抱いていた。
「ただのナレーションの僕を、すぐに名前で呼んでくれた人なんて、初めて」
そんな風に、和正のことを特別に想っていた。
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