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忘れられないんじゃない、覚えてるんだ。
この身体に染み付いている。
ずっと記憶の裏側にこびりついて、離れない。
これは間違いなく、“菜穂”の番号だ。
じゃあ、この、子供は……?
「――太陽!」
空気を引き裂くように突如響いた声に、びくりと肩を震わせた。慌てたように立ち上がった俺の前で、さっきの子供が母親であろうその女にきつく抱き竦められていた。
「ごめんね、お母さんが手を離したから…っ」
何度も“ごめんね”と繰り返すその声が耳に痛いほど突き刺さる。少し身体を離したその女は長い髪を耳に掛けた。露わになった横顔を視界に映した瞬間、本気で心臓が止まったかと思った。
どくり、どくり、と不穏な音を立てる心臓。指先は凍てついたように感覚を失い、喉が張りつく。なんの抵抗にもならないと分かっていながらも、狼狽える足は距離を取るように一歩後ろへ後退した。
「おかあさん」
「大丈夫?どこか怪我してない?」
「うん、だいじょうぶ。あのね、ぼく、おにーちゃんとおはなししてたんだ」
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