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秘密
玄香の章
女の子に恋をしました。それがわたしの初恋です。
二年で隣のクラスになって、はじめてその存在を認識した佐川さんの横顔は、ほんとうに綺麗だった。選択科目が同じで、移動した先の教室がたまたま隣になったから気づいたのだけど。肩につくかつかないかのところで切りそろえた黒髪を耳にかけ、黒板を見上げるそのライン。西洋人のようにいかついEラインじゃなくて、額も、鼻も、唇も、顎も、なんだか優しい曲線で描かれていて、内側から光ってるような白い肌なのもあって、夢のように綺麗だなと一瞬にして目を奪われたのを昨日のことのように覚えてる。
だからずっと話しかけてみたかったけど、隣の席だとはいえ授業中だし、佐川さんは友達が多いとはいえない人見知りするタイプの人で、話しかけたら引かれるかもと思うとこのままときどき横顔を眺めてるだけでもいいなぁとか、三年で同じクラスになれたら声かけて見ようかなぁとか、先生の話そっちのけで、ずっと佐川さんのことばかり気にしていた。
でも、このときはまだ、恋じゃなかった。
夢のように綺麗な佐川さんの横顔を、夢を見るように幸せに眺めていた
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