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高校生になりました。
辛い受験を乗り越えて、無事に第一志望の高校に通えることになりました。私はこの高校を落ちる訳にはいきませんでした。
何故なら滑り止めの私立は女子の制服が赤いリボンだからです。第一志望の高校はブレザーで、紺のネクタイかリボンを選択できます。私はリボンを買わずに、ネクタイにしました。家の姿見に映る私は、制服に着られている感じを拭えませんが、何処か大人びて見えます。
私はとても満足でした。
すると、そんな私を見た母が声を掛けてきました。
「あんたも女の子なんだから、もっと可愛い格好すればいいのに」
私は無視して学校へ行きました。
学校へは電車で30分ほどかかります。
初めての満員電車は私の予想を遥かに上回る苦痛でした。ドアに押し付けられるようにして立っている私は、辛さを忘れるために外を眺めていました。
右から左へ、高速で流れていく見慣れない風景。冒険でもしている気分です。
ふと、お尻の辺りに何かが当たりました。おそらく鞄でしょう。こんなにも狭い場所にいては、鞄どころか人との接触は避けられません。多少不愉快でも我慢しました。
暫くして駅に到着すると、鞄が当たらなくなりました。
ほっとしたのも束の間、また何かがお尻に触れました。それは撫でるようにして私のお尻の上を滑ります。
見なくてもそれが手だと認識出来ました。
不快感で全身に悪寒が走ります。
助けを求めることも、抵抗する術も無い私は、ひたすら耐えることしか出来ませんでした。
酷い顔をしていたのでしょう。学校に着くと、不安そうにナナミが声を掛けてきました。
志望校が同じだと知った時はお互い驚きましたが、やはり見知らぬ人ばかりの高校では、ナナミという存在は私の大きな支えでした。
先程私に起きた出来事についてナナミに話すと、何故か彼女は羨望の目を向けてきました。
「痴漢されるなんて、それだけ可愛いってことだよ。言っちゃえば、それが女子のステータスみたいなところ、あるよね」
言っていることが理解できませんでした。
女としてのステータスが、男に弄ばれることで上がるなんて馬鹿らしいにも程があります。
言葉にできない不快感で胃がムカムカしていると、一限目のチャイムが広い校舎に響きました。
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