第13話 居る――――――!

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第13話 居る――――――!

 天が朝目を覚まし、便意を感じてトイレに行くとトイレットペーパーがなかった。  仕方なく予備を取りに行く。高い所に置いてあって、いつもは何か踏み台になるものを用意しなければならないのだが、なぜか今日はおあつらえ向きの台があって、難なく取れた。 「て、天先生――――――!」  突然、地が天の足元を見て、震えながら素っ頓狂な声を上げている。 「なんですか? 朝から騒々しい」  と言って、出てきた人も、 「何やってんですか? 早く降りてください!」  と、慌てふためいている。  天は、不思議に思いながらも足元を見ると、 「居る――――――!」  と叫んで乗っていたものから飛び降りた。  天が踏み台にしていたのは鋼鉄の迷惑であった。 「これはとんだご無礼を、どうか、どうか、お許しください!」  天、地、人、3人とも、すぐさまその場にひれ伏した。 「どうか、何なりと私共に罰をお与えください!」  天が言うと、鋼鉄の迷惑はふわりと浮かび上がると真っ直ぐトイレの前に飛んでいき、見えない力でトイレのドアを開けると、洋式の便座の上の蓋の上に鎮座ましました。  説明が遅れたが、ここは鋼の絆の本部だが、ただの安アパートの一室である。 「ご神体様? 罰はトイレを使うな、ということでしょうか?」 「あの、ご神体様? それは地味に厳しすぎませんか?」  鋼鉄の迷惑は何の反応も示さない。 「その罰、受けさせて頂きます」  3人は深々と頭を下げて受け入れた。   しかし、そんなものが長続きするはずもなく。 「ご神体様――! どうか、ご慈悲を!」 「もう、限界です!」 「断食ならいくらでもします! 出すのを我慢するのは無理です――!」  何とか許してもらって事なきを得た。  しかし、 「ご神体様のご寝所を作ろう!」 「は? 一体どこに?」 「押し入れ」 「ご神体様は便利道具を出す未来ロボットじゃありませんよ!」 「ついでに、外からカギがかかるようにした」 「それじゃ、座敷牢じゃないですか!」  鋼鉄の迷惑を3人で押し入れに誘導すると、意外にもあっさりと押し入れに入った。これ幸いと押し入れのふすまを閉め、鍵をかけた瞬間、3人の視界が真っ暗になった。 「な、なんだ?」 「何が起きた?」 「どうなった?」  目が慣れてくると、細~く光が漏れてきているのが見え、中の様子も分かってきた。そこは紛れもなく、さっき鋼鉄の迷惑を閉じ込めたはずのご寝所だった。一瞬にして位置を入れ替えられたらしい。
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