キレイの魔法

キレイになりたい

　キレイになりたい。キレイになりたい。キレイになりたい。

　今までこんなこと思ったこともなかった。勉強を頑張れば志望大学に入れた。ボランティアサークルで頑張れば、人の役に立てているという実感が湧いた。就活は大変だったけれど、何とかこの会社に入社できた。企画部は希望した部署ではなかったけれど、努力したらプロジェクトメンバーに抜擢してもらえた。

　でも、キレイになるにはどうしたらいいんだろう？　魔法があるなら自分で自分にかけたいぐらいだ。

　帰りに駅ビルの本屋でファッション誌を買ってみた。こんなダサい私が買うにはハードルの高い雑誌。でも、勇気を出してみた。

　帰宅してすぐに、梶原くんからもらった基礎化粧品を手に取る。自分の肌を丁寧にお手入れすると、今までぞんざいに扱っていたことが申し訳なく感じた。

　大人ニキビ、治るかな？　治ってほしい、切実に。きっとこの想いがキレイの魔法。

　ベッドに寝転んでファッション誌を捲る。ページを追うごとにカルチャーショックを受けた。世の中の女性たちはこんなに自分磨きを頑張っていたのか！　という驚き。

　それからの私はせっせとお肌のお手入れに勤しんだ。メイク動画を見て真似したり、新しい服を買いに行ったり。
　今まで知らなかった世界に触れたせいか、提出した企画書は斬新でいいと褒められた。