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闘いはさらに続く。
獣が反転して、雅哉のいる場所あたりに戻って来たのだ。
まぁ、そうだわな…こいつは陽動と分断が目的なんだから。
それが分かっていてなお、じっと見守ることしか出来ない。
雅哉にとってそれは当たり前であり、歯がゆかった。
あの場に参加していないだけなのに、自分の覚悟が足りないような気がする…同盟を頼まれたのに口と腹を割っていないんだから実際足りないんだけど。
重荷が、のしかかる。
移動するたび、流れる空気。
見えないはずなのに、緊迫感がひしひしと感じるのだ。
だが、それでもやらねばならない。
自分の…役目を、果たさなければ。
これからの未来のために、たくさんのものを残していかねばならない。
雅哉はズボンの横ポケットの中に手を突っ込み、ポケットの中で何かしらの手の動きをする。
しばし後、戦場の空気がまた揺れる…足元がおぼつかない…軽く吹き飛ばされる。
「…ッ!?」
雅哉は流れる風で運良く壁に叩きつけられた…遠くに吹っ飛ばされては困る。
(HI………Iオンラインの専用パスワードの権限により、………誠…様へのアクセス権限施行。
システム…イエロー………解析率…53パーセント。
吹っ飛ばされたら、終わりだな。
まぁ、見つかっても終わりだが。)
雅哉は戦場の中で、必死に食らいつく。
リーヴルの陽動作戦でこういった魔物の動きが異能機関のメンバーの引き離しに特化している。
つまり、ここにいるメンバーは魔物との闘いに集中していて雅哉に気づいていない。
高速ヒットアンドアウェイの動きは、見事に異能力者3人を引き付けて離さない。
雅哉はそのスキにメンバーにちょっと細工を仕掛けるつもりなのだ。
ゆえに後戻り不可能な違法行為なのだが、世の中そんな綺麗なもんばかりでは片付けられない。
目的のために最強の異能犯罪者の策を利用するのだ…成功しても目をつけられたら確実に消されるな。
「遼(りょう)先輩、前に出て下さい!」
少年が激しく叫ぶ。
声の位置からして挟撃狙いかなぁ…まだ「解析」終わってないんだからもっとゆっくり戦って欲しいもんである。
いや、ゆっくり戦って周りを確認して雅哉に気づいても困るけど。
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