理想が壊れる時

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とりあえず、メールの確認とプリントアウトした資料に目を通すのは同時進行。 仕事柄、雅哉は速読も実は得意だったりする…異能の世界に片足突っ込んだゆえにスキルとキャパの格差に麻痺した本人は一般人の自分の実力は認めないが。 正義のヒーローのアクションスキルと比べすぎである。 (礫湯聖治(れきとうせいじ)…。 異能事件により5才の頃に両親を失い覚醒、以後13年もの間戦闘員として組織に尽くしてきた。 叩き上げで戦闘経験と実績が高く、ゆえにプライドが高い。 ただし、一般人の救助率とメンバー同士の連携率は低い。 なるほど、この人だな。) リストからパーソナルデータを引っ張り出して、数十人の人物の中から主犯格の目星と素性を洗い出すのにおよそ3時間。 雅哉って普段は優柔不断だが、腹をくくって人が見ていないところで好き勝手動くと本当に仕事が速い。 (とりあえず、最悪を想定して唐玖(とうく)さんにデータを送っておこうかな。 いや、そこまでやるとヤバいかな…。) 判断の甘さは今一つだが。 (とりあえず、繚先輩が戻ってこないことはリーヴルならすぐ気づくはず。 彼と交渉中の待機メンバーは現在30人…まとめて騙して組織から戦闘員を引き抜くんだから万が一裏工作がバレた時に組織から追っ手がかかる。 その時には抗争が起こるはずだから、逃げやすいよう引き抜く方と残る方…互いに勢力が拮抗するよう半分ずつ奪っていくんだな。 この町の異能力者は封鎖される前までは夏の一件に関わらなかったし手付かずだったから、今回はちょっと多いな…繚先輩の名前でうまくたきつけられたらリーヴルへの足止めになるんだけど。) 夏の一件とは、少し前に大盟約が破られたことによるヌシ同士の争いのひとつである。 檸檬降(れもんおろし)市という町にたくさんの神や異能力者が侵攻した事件があったのだ。 エサがあったので、大抵の都市とヌシが動いたがこの町は例外だったりする。 てか、ここまで知ってるなら詐欺なんかせんでも土産は十分揃っていると思うんだが…隔意と無理解ってのは厄介な話だ。
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