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どんなものにも、対価と代償がある。 雅哉は、自分でやったことの責任を取らねばならない。 世界が欲しいなら、世界と戦わなくてはならない。 世界とは、自分を含めたすべてを指す。 ゆえに、軽く扱ってはならない。 「調和を為すために、一番大切なことは何だ? それは、相手を「知る」ことだ…異能は人間のことは「知る」ことは無いだろう。 そもそも、異能はなぜ人間を守護すると思う?」 闇が、形を取り…人間の形を映し出す。 フクの制服を着た、筋肉質の身体つき…無数の傷が歴戦の勝利と誇りを物語る。 資料で見た男…礫湯聖治。 「そもそも、過酷で凄絶な世界を己と仲間の拳で生き抜いてきた猛者の誇りを言葉と法律で完全に縛ることなど出来はしない。 異能が異能たるべき世界の仕組みを、お前は知らないわけではないだろう?」 資料だけとはいえ、たくさん見てきた…たくさん知ってきた。 だから、終わらせなくてはならないと思った…だが無理なのだ。 人間と異能は、あらゆるものが違う。 「人間は異能に密かに自らの生活と安定を守られる。 しかし、その対価として異能の世界を支えるために人間はあらゆる尊厳を異能に差し出さねばならない無自覚の盟約がある。 異能が守護者であると自覚することそのもの…人間の弱さと愚かさが加護の対価。 人間が守られなければ生きられないと自ら自覚することそのもの…それが恐怖と憎悪をもたらしかねない異能力者に両者が共存するための居場所と加護という役割を与えてくれる。 お前のような、無私の善意で自らの信念を持って歩み出す人間は両者の調和の邪魔なのだよ。」 (…ッ!?) 全身に駆け巡る激しい刃のような痛みを、かろうじて食い縛る雅哉。 まだ、影の、闇の重圧は続く。 「人間は守られ導かれ狩られるため、未来永劫愚かで弱くあり続けなくてはならない。 俺とて、異能なのだ…皆侵略などとほざくが世界が違っても異能の世界と役割を守らねばならん。 そもそも生きることは文明の発展と進化とともに変化し、可能性を広げること…ひとつの大地に二つの勢力が存在しては時代とともにいつかは必ず衝突するときがくる。 いつまでも互いに衝突を避けることは出来ない。」 この世界に来る前には、数多の世界すら自らの加護のため領域としてきたリーヴルの言葉は重い。 たくさんの世界のあり方と成り立ちを、長い時間をかけて見てきたのだ。
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