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異能は何をもって、人間を守護するのか。 異能は、何のために戦うか。 人間である雅哉に、その真意はほとんど理解出来ない。 よく創作では世界のためとか未来のためとか自分のためとか言われているが、雅哉はそれだけではないと思った。 異能にとってはチカラが己の刃。 刃とは魂の叫びであり、意志。 人間が言葉を交わして相手に意志を伝えるように、異能は自らの剣と刃とチカラで相手に意志を伝える。 それだけが、すべてなのだ。 (…おかしい。) 雅哉は思った。 リーヴルの言っていることは紛れもない事実だ…だが、許されざる誤りでもある。 異能とて、心で動くという点では人間と同じ。 すべての異能が弱い立場の生き物にマウントを取らないと自分たちの組織の面倒を見られないとかを本気で信じていたら…それこそ世界は…。 (僕は、わずかながら異能に触れてきた。 実際に言葉を交わした方もいれば、遠くから見ていただけの方いる。) 言葉に出来ないんだから、抵抗の意志を持つしかない。 (どれだけのことが分かったかは分からない。 だけど、僕が見てきた方は…。) 異能のリーヴルは、言葉にしなくとも相手の感情を察する力が強い。 だからこそ、無抵抗ながらなお意志が挫けていない雅哉の感情が分かる。 あってはならない人間の魂の有り様に。 異能の根幹を揺るがす意志に。 肉と皮を通した器の腹の内から、憎らしさがこみ上げてくる。 もともとの器の持ち主も、こんな感情だっただろうか。 ―弱い癖に思い上がりも甚だしい、生意気なガキめ。― 単に怒りが抑え切れず、更なる衝撃が雅哉の身体を貫こうとしたらしい。 激しい憎悪と嘆きは痛みとなって雅哉の魂を抉る…抉ってもなお、追撃が後から後から迫ってくる。 触れられない怒り、失った嘆き。 とめどなくやりきれない激情が、何度でも溢れ出す。 強弱とか、程度の差ではない…互いに失ったもの同士の意地の張り合いだ。 思念の乱れが、直接精神同士を揺るがして…。 (急いてることよ。) そんな拷問がしばらく続く。 雅哉はさらに上に行くためにそれを受け続けた。 そんな中でふわり、と別の柔らかい思念を感じた。 雅哉の感情が、それに触れるや急速に安らいでいく。
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