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「…えっ?」
一瞬、意識が暗転して…雅哉は気がつけば自分の部屋のパソコンの前に座っている。
さっきと同じ光景…だが、知らない人物がスクリーンセーバーの暗い画面越しに映っているのが見えた。
「まったく、よくここまで調べたもんだ…愚痴と不満だけじや、ここまで動けんよ。」
だらしなくスーツを着崩した男は、放心状態になりかけた雅哉の後ろから器用にマウスを操作しスクリーンセーバーを消して中のデータを覗いていく。
データを消される!!
我に返った雅哉はその人物の操作を止めようとした。
このままでは、すべてが奪われる。
下手な偏見は持ちたくないが、人任せにしたくないし初見の人物を信用するほどお人好しではない。
「国の異能絡みの部署のメインサーバーに、お前さんらが集めたコピーデータを転送する。
んで、こっちのサーバーのデータはそのまんま。」
ニコニコしながら、そいつは有無を言わせず勝手に話を進めてしまった。
「あの、こっちのデータはそのまんまって…?」
何か、意味不明な話になっているが雅哉はその失礼な男に問いかけた。
「うん。
バラさずに内輪で愚痴っているだけなら消す必要なんかないでしょ?
揉み消し方にはたくさん方法があるけどあんまり消すと、変な噂が立つし事件発見の連絡網に小回りが利かないから。
情報に限らないけど、何でもあまり一人占めするとみんな悲しい思いをするからね。
ただですら話しにくい話をしやすい雰囲気を作らないと、異能事件発見に必要な一般人からの情報提供が減ってしまうでしょ。
だから、仲介者として残しておく。」
データ転送中の画面が出る。
てか、国が動くの?
僕、どうなるの?
雅哉は助かった気がしないが、何となくこの男性の声はさっき触れた思念と同じ感じがした。
「そりゃ、怪物の発見情報なんて普通の人間は真面目に他人にバラしませんけど。
あと、あ…ありがとうございます。
僕、天追雅哉と言います。」
つい、お礼と自己紹介を口にしてしまう。
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