私が私を殺した日

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ホームセンターへ行って必要なものを買う。 小さな鞄しか持ってなかったから、買ったものを入れれるサイズのトートバッグ。 電車を乗り継いで一番近い浜辺へと向かった。 日はもう沈んでいて、西の空は微かに残るオレンジ色があとわずかな時間で青へと飲み込まれる所だった。 目的の駅に着いて人の波に乗りながら改札を出た。 タクシーを使って辿り着いた浜は汚くもなく、それでいてそこまで綺麗なわけじゃない。 流れついたであろう薄汚れたペットボトル。 打ち上げられた海藻が砂塗れになって転がっている浜をサクサクと音を立てて波打ち際へと向かう。 財布とかを入れた鞄を砂の上に置いて、トートバッグは肩に掛けたままに。 靴を脱いで靴下も脱ぎ捨て、ズボンの裾が濡れるのも構わずに波へと足を進める。 少し冷たい海水が砂を巻き上げ、足の指の隙間をすり抜けていく。 波の音が耳に心地いい。 寄せては返す穏やかな水流に抗うようにざぶざぶと足を進めた。 膝のすぐ下まで水に浸かったところで足を止めた。 バランスを崩さないように肩幅程度、足を広げて立つ。 手首に巻き付けたままのヘアゴムを外して、後頭部の高いところで一つ結びにする。 これをくれたのは貴方だったなと、小さなプラスティックの飾りを見て思い出して思わず笑みがこぼれてしまった。 しばらく足元の水面を見つめてから、顔を上げる。 キラキラと夜空を光る星々は美しくて、涙が出そうだった。
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