私が私を殺した日

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街角で見た貴方は、私が知る貴方よりずっと幸せそうな顔をしていた。 隣を歩く人は私の知らない女性で、その手はベビーカーを押していた。 幸せそうな”家族”の光景、そこには私の知らない貴方がいた。 考えが回らない頭で、バレないように隠れて写真を一枚だけ撮った。 ボロボロと泣きながら入ったコーヒーショップで、貴方の友達と紹介された人へ連絡をした。 飛んできてくれた彼は、とても気まずそうに教えてくれたよ。 貴方が、ずっと片思いしていた人なんだってね、その女性。 でも気持ちは伝えれなくて、ずっとずっと想い続けていたって。 でもその女性は別の人を好きになっていて、そのまま結婚してしまったって。 結婚の話を貴方が知ったのが、私と付き合うことになった日の前日だったっていうのは偶然だったのかな。 疲れた様子だったその原因が仕事じゃなくてその女性が原因だったっていうのは、気付いたよ。 手が届かないところへ行ってしまうなら、手近なところで済ませてしまおうって思ったんだよね。 付き合いだした当時、私は自分の事で手一杯で貴方の事を全然見れていなかった。 そういうものなんだって思っていたよ。 今振り返ったら、必死に彼女の事を考えないようにしていたんだなってわかっちゃった。 私と一緒にいる時は、ちゃんとその女性の事忘れられた? そうだとしたら、少し嬉しいって思うよ。 でも完全に忘れさせる事は出来なかったんだね。 貴方が頻繁に参加してた飲み会、その女性が来ている時は必ず貴方も参加していたらしいね。 ずっと二人で話してたって貴方の友達は教えてくれたよ。 楽しかったよね? 朝帰りになってしまうほど、時間を忘れて一緒にいたかったんだよね? いつから……だったのかな。 貴方とその女性、関係が変わってしまったのは。 ずっと前からなのはわかるよ。もう何年も前から、飲みに行くと帰りは必ず朝になっていたしね。 私は全然気づかなかったけど。 バカだなぁ〜、私。 貴方の事何も見ていなかったんだね。 最初から気持ちが無いのも、別で大切な人がいたことも、なんにも知らなかった。 こんなに好きだって思ってても、涙が止まらなくなっていても、貴方の事嫌いになれない。 好きの反対は無関心ってよく言うけれど、私はそうはなれないのかも。 だって貴方のことまだ大好きだから、貴方が幸せでいてくれたら、それだけでいいって思えてしまう。 貴方にとっては迷惑な話だよね。 好きでもない女からの一方的な好意なんて邪魔でしかない。 大丈夫、貴方に迷惑はかけないよ。 貴方のことを大好きな私はどうにか出来るから、安心して欲しい。 涙を拭って、すまないとひたすらに謝る貴方の友人に感謝の言葉を述べてから別れた。 やらなきゃいけないことが山ほどできた。 貴方とお別れするためには必要な事。 貴方のためだと思えば、迷いはなかった。
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