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鈴虫が、この世の何かを祝福するように静かにそして小さく、リーンリーンと鳴り響いていた
とても穏やかな夜である
「ノスタルジーで、何かに思いをはせるのに、これほど相性が良い空間はあり得ないと思う!! 私自身もとても気に入っている。しかし、水曜日の今の時間だけは甘く苦い、ビターのチョコレートのような気分になってしまうのが、非常に残念だ」
「その理由は、隣でギターをかき鳴らし大声で歌っている青年の歌声だろう。それが、私の腹の中をかき乱してくる。歩くたびにギシギシと床の音がするそんなビンテージな家でカエルがつぶれたような声で歌われた日にはたまらなく大きなため息が出てしまうのは仕方ないと思う」
「なぜ今なのだろう? 毎週この声を聴くたび、そう思ってしまう
こんな素敵な空間で、なぜそんなにも大きな声で、歌を歌ってしまうのかが永遠の謎である。人の迷惑になるということは考えないのであろうか? 私は他人の迷惑を気にせずに、自由にふるまうやつらが嫌いなのだ!!」
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