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――そうよ。自分のためじゃなかったら、魔法を使ってもいいはずだわ。
ある日、二人で住む家がある丘の上で。クレアは満天の星空を見て思いつきました。これだけたくさんの星があるのですから、きっと少しくらい数が減ってしまっても問題ないことでしょう。これらの星が全て、金の欠片に変わったら。それを売ることで、とてもたくさんのお金が手に入るはずです。
――おばあさんのためだもの。約束を破ったことにならないわよね。
おばあさんが寝静まったのを見計らって。クレアは魔法の杖を振って、呪文を唱えました。
「星よ、星よ、満天の星よ!金の欠片となって、降り注げ!」
すると、どうでしょう。
クレアの魔法が届いた途端、夜空の全ての星がキラキラと輝き始め、次から次へと小さな金の欠片に降り注いで来たのです。
クレアは喜びました。これほどたくさんの金があれば、おばあさんの新しいローブを買うことはもちろん、クレアの綺麗なドレスも、新しい家を買うことも簡単にできることでしょう。クレアは籠を持ってきて、降りそそぐ星を回収して回りました。
ところが。
「ど、どうしよう……星の雨が止まらない!」
星の数は、クレアが思うよりもずっとたくさんありました。クレアの魔法がかかってしまった星全てが、金の欠片に変わって降ってきてしまいます。あまりの数に、丘はどんどんクレアが拾いきれない金色の破片でいっぱいに埋まってきました。
クレアがパニックになっていると、おばあさんが起きてきました。やむなく事情を説明すると、おばあさんは呆れて言います。
「クレア。お前は私のためだと言ってくれたけれど、本当に私だけのためだったかい?お金がたくさんあれば、自分の服や家も新しくできると、そういう気持ちはなかったのかい?それが“私利私欲”というものなんだよ」
何も、言うことができないクレア。確かに、おばあさんの言う通りクレアはおばあさんのローブを買うだけではなく、自分の好きなものもたくさん買えるに違いないと思っていたからです。
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