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おばあさんは言いました。実は、星と呼ばれるものの中には、お月様や太陽も含まれているというのです。このまま全ての星が金の欠片になってしまったら、星や太陽もなくなってしまうことになるでしょう。そうなったら、この世界は真っ暗な闇に包まれてしまいます。
おばあさんはクレアの魔法を解くと、既に落ちてしまったたくさんの星を一つずつ拾い集めて、箒に乗ってお空へと返しはじめました。クレアもおばあさんと一緒に、落ちてしまった星を持って空に戻し始めます。
――星を降らせるのはあんなに簡単なのに、どうして戻すのはこんなに大変なのかしら。
汗だくになり、疲れ果て、それでもおばあさんが頑張る姿を見てはクレアも休むわけにはいきません。
何日も何日もかけて、クレアとおばあさんは星を戻し続けました。その結果、普段家でやっているお仕事が進まず、しばらくの間ふたりはほとんどお金がなくなってしまったのです。
おばあさんは、今日だけだよ、と魔法でパンを一つ出してくれました。
疲れ果てて食べるパンは、今まで食べたどんなごはんよりも美味しく感じられました。
「よく頑張ったね、クレア。……いいかい。クレアが落としてしまったたくさんの星の中にも、私達の星のように命が存在する星があったかもしれない。そういう星を、私達のためだけに金の欠片に変えてしまうなんてことは、絶対にしてはいけないことなんだよ」
それにね、と彼女は続けます。
「星を降らせてしまうのは簡単だったけれど、戻すのは本当に大変だっただろう?それは、命と同じなんだよ。死んでしまうのは簡単だ。でも、お母さんが赤ちゃんを産むのはとても大変だし、人が生きていくのもまたとっても大変なことなんだ。壊すのは楽でも、直したり作っていくのは本当に難しい。それがわかっている人は、簡単に人のものを壊したりなんかしなくなる。クレアも、そういうものがわかる魔法使いになっておくれ」
おばあさんの言葉に、クレアは心から反省しました。
同時に、自分達の魔法の力がどれほど恐ろしく、時にこの世界をも壊してしまいかねないものであることを理解したのです。
クレアはもう一度、おばあさんの元で仕事をしながら、修行をやり直すことにしました。
おばあさんの清らかな心を知らない、多くの人は、おばあさんのボロボロの格好を見て今日も笑います。それでも、クレアはもう気にしません。
どんなお星様よりキラキラと輝く素敵なものを、おばあさんから教えてもらったのですから。
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