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おほしさまパニック!
クレアは魔法使い見習いの女の子。
魔法使いのおばあさんのところで、一生懸命魔法の勉強をしている真っ最中です。
魔法使いのおばあさんは、いつもクレアにこう言いました。
『いいかい、クレア。この世界に住む多くの人間達に、魔法は使えない。魔法が使えるのは、魔法使いの一族だけだ。だから魔法使いの一族に生まれた私達は、けして私利私欲のために魔法を使ってはいけないんだよ』
『しりしよくって、なあに?』
『自分の欲望のためだけに、魔法を使うことさ。魔法を使える人間は、神様に“みんなの役に立ちなさい”と命じられた人間なんだ。力を持った者は、神様の期待に応えて、みんなのために魔法を使わないといけない。それを忘れてはいけないよ。でないと、一人前の魔法使いになることはできないからね』
魔法使いは、その気になれば魔法の力でいろんなことができます。
箒で空を飛ぶことはもちろん、虹をキャンディーにすることもできるし、原っぱにたくさんのお花を咲かせることもできます。雨が降らない土地にたくさんの雨を降らせることもできれば、逆にさんさんとおひさまが照り注ぐようにすることもできるのです。
クレアは、どうしてもわかりませんでした。
何故ならクレアとおばあさんは、とても貧乏な生活をしていたからです。お姫様が着るようなドレスは買えないし、お洒落な靴もご馳走も買えません。魔法の力があれば簡単にお金は稼げるはずなのに、おばあさんとクレアはいつもつつましく家で人間と同じお仕事をして、ごはんを食べるお金をもらっているのです。
何故、お金を稼ぐために、魔法を使ってはいけないのでしょうか。
特にクレアは、おばあさんのボロボロのローブが、いつも可哀想でなりませんでした。破れた布を貼り合わせたローブはとてもみすぼらしく、町に出ればそんなおばあさんを人々が指をさして笑うのです。
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