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「公私混同は僕が一番嫌いなことです。薬の話じゃないなら、帰ります」 「今会社に帰っても不審がられる」 「じゃあ車で時間を潰します」 「俺がMRが来ないって、会社に連絡したら?」 「……どうしても話したいなら、お願いだから仕事時間以外にして」 「絶対捕まらないだろ」 僕は職権乱用と上から目線の孝司にとうとう息巻いた。 「わかる?孝司。僕にとってMRの仕事はあと一年なの。一年しかないんだよ?僕は薬を売りつけるために、お金を稼ぐためだけにこの会社に入ったんじゃない!自分が本当にいいと思う薬について話してる時ほど、誰かの役に立ててるって感覚はないんだ。その代わり、売りたくない薬の説明をするのは世界で一番嫌いだ。それくらい、僕はこの仕事に本気なんだ。いくら孝司が仕事先の人間でも、僕の大切な時間を奪われるのは絶対に嫌だ。それがプライベートがらみなら一層嫌だ!この話はもうしない。ここのMRも、次入ってくる後輩に頼む。僕はもう君と話をすることはない」 こんな態度、耐えられない。明らかに医者という立場を使って僕を操ろうとしてる。
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