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手にぶら下げたままの薬の資料は開かれることはないだろう。それならもう、僕の仕事はここにはない。 僕が踵を返して部屋のドアを開けようとすると、焦った様子の孝司が目の前に体を滑り込ませてくる。 医者にしては筋肉質な体型、整った顔。今はもう、全然魅力的に感じない。 「優斗、俺しかいないってわかってるんだろ?言ってたじゃんか、僕を必要としてくれるのは……」 「孝司だけだって?今はもう、違うよ。どいて。会社に戻らないと時間やばい」 「お前がMRって仕事が好きなのはわかった。でも契約は今年までだ。俺が会社に一言言ったら、変わると思わないか?」 「それって……」 「俺が会社に言ってやるよ。どうしても、お前からじゃないと薬は取らないって。大病院の息子が言うんだぞ?あっちだって少しは考えて……」 「何馬鹿なこと言ってんだよ!お前の言葉で僕の将来を決めようだなんて、人として最低なこと言ってるってわからないわけ!?」 「次またMRって職に就けるかはわからないし、いい条件だろ」 「そんなの、死んでも、願い下げだね」 最低な提案を僕は迷うことなく却下した。
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