8

7/76
前へ
/167ページ
次へ
「あっ。小林さん?たんぽぽ薬局の神湯紘です」 「先ほどぶりで。何かありましたか?」 「薬のことじゃないんですけど……さっき小林さん、うちに来た時に名刺入れ忘れていきましたよね?」 スーツの内ポケットを探ってみると、いつもあるはずの四角の感触がない。 「ほんとだ。どうして出してもいないものを……すみません。すぐに取りに行かせていただいてもいいですか?」 「もちろんですよ。今患者さん居ないし、いつでもどうぞ」 「本当にすみません。ご迷惑おかけします。はい、では……」 先ほどまで乗ってきた車にまた乗り込み、エンジンをかける。 「気ぃ引き締めなきゃな」 ✳︎✳︎ 「あっ、小林くん」 良二さんは戸締りをしている最中だった。 「良二さん、申し訳ありません。時間外なのに」 「いいよいいよ。今日うち5時で終わりなのさ。よかったらお茶でも飲んでってよ」 「そんな!申し訳ないです」
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加