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「え……恋人やめたい、って…どういうこと?」 孝司は突然の僕の言葉に動揺してる。 時間は夜の1時半。僕はあの後、気が変わらないうちにと思って、孝司のーー恋人の家で待っていた。 「言葉の通り。僕気づいたの。こういう関係って絶対いい終わり方しないって。だったら傷が浅いうちに引いたほうがいいなと思って……」 「傷が浅いうちにって、僕が何か優斗を傷つけたかな?」 自分は無罪、みたいな言い方に、僕はカチンときたので言ってやった。 「知らないとでも思ってんの?僕の二丁目のゲイ仲間が、孝司がめちゃくちゃ遊んでるって教えてくれてんの。映画が趣味でもないのに孝司の家に絶対好きじゃない感じのDVDが並んでるのも、家の中何もないのに寝室だけはすごく趣味がいいのも、全部僕のためじゃないってわかってた」 「それは……映画は優斗が好きだって言ってたし、寝室は僕らにとって大事な場所だから…」 「言い訳やめてよ!僕がどれだけ傷ついたと思ってんの!?僕が他の男と遊んでたら知らないフリして、怒ってよ!怒って欲しかった……そんなことしたら傷つくって言って欲しかったのに……」 僕はカバンを漁って、この部屋のキーを孝司の胸に押し付けた。 「もう、絶対来ない」 呆然とする孝司を部屋に残して、僕は目に涙をためながら扉を閉めた。 終電の時間なんて関係なかった。 ただ、今言わなかったら絶対にもう言えないってわかっていた。 僕は心の中で、何度も何度も、「ごめんなさい」って叫んだ。 僕の自尊心が低いばかりに、男に依存して、周りのいい人たちに心配ばっかりかけて。 1番悪いのは僕だ。 僕だって孝司のことを置いて、別の男と遊んだのに。 もっとちゃんと正面から話し合う時間を設ければ、孝司も心を入れ替えてくれたかもしれないのに。 僕は勝手に孝司を悪者にして、まるで自分は被害者みたいに気取って。僕だって充分恋人を傷つけるような行動は何度もとってきたのに。 黄色のタクシーはまるで僕を載せるためにみたいなタイミングで目の前に現れて。 「世田谷区」 僕はタクシーの運転手に素早く告げて、バックを抱えて腕の中に顔をうずめた。
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