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「どこ行こっか」
「そうだね……」
街中無法地帯と化していた。やりたい放題し放題。行き交う人に端からケンカを売る酔っ払いオジさん。違法薬物で妙な歩き方をして不気味に笑う少年。人目も気にせずイチャつくカップル。店という店は襲撃され品物は持ち去られていた。
何処にも逃げ場は無い。あと数時間で地球は終わる。未来を失った人間はこんなにも醜くなるものかと情けなくなった。
「海でも行かない? 街中よりは安全じゃない?」
「そうだね。こんな所にいたら地球より先に滅亡しちゃう」
繭子が車を発進させる。危険走行する車を上手にすり抜け前へと進む。
「さっきより大きくなってきたね」
頭上に見える彗星が嫌でも目に入って来る。夜空に輝く星よりもずっと大きく重たそうな彗星。あんなのがぶつかったら地球は木っ端微塵に吹き飛ばされるだろう。
「勿体ないよね。こんなに住みやすい星だったのにね」
「うん。楽しませてもらったよね」
「そうそう、小学校の時の登山、覚えてる?」
「冠着山! あの山は小学生には厳しすぎだったよね〜……」
海までの道、繭子と思い出話をした。小学校から仲良くしていた繭子とは思い出が有り余るほどある。語り尽くしても尽きる事が無い。
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