悪意…香織

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* 「どうしたんだい?珍しいねぇ……」 「たまには良いじゃない。」 堤さんの家からの帰り道…… 私はスーパーに立ち寄り、目についた花を買った。 「なんて花なんだい?」 「サンゴールドっていうのよ。 ひまわりの一種よ。」 「これがひまわり? ……それにしてもすごい花だね。 一体何枚の花弁が重なってるんだろうね。」 母は、興味深気にサンゴールドの花に見入っていた。 家に花を買って帰るなんて、何年ぶりのことだろう? 確か、花屋に勤め始めた頃は、たまにもらってきたりもしたけど、こんな狭くて汚い家に花なんて…そう思って、いつの間にか飾らなくなってしまった。 だけど、今日はスーパーの表に並んでた花に妙に気をひかれて…… 堤さんに母の話をしたせいかもしれない。 話しながら私は、本当に母に申し訳ないと思った。 母の告白を聞いた時よりも、今日の方がずっとそう思った。 母は一番苦しい時に誰も頼れる人がなく、一人でその苦しみと戦ってたんだと思うと、本当に胸を締め付けられる想いだった。 こんなものくらいで償いになるとは思わないけど…… 花は人の心を癒してくれるから、すこしでも母の気持ちが軽くなれば…… (……って、遅すぎるよね。 母さんはもう乗り越えたんだから……) 遅すぎてもなんでも、とにかく家に花があるのは私自身も気持ちが良い。 これからは、たまに花を買って来よう……私はふとそう思った。
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