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(父さん…母さん……ちょっと掃除させてもらうよ。)
ここに入る時は、いつも緊張する。
少し前までは入ることさえ躊躇ったこの部屋……
おかしいな…ここには何の思い出もないっていうのに……
家具もほとんどが真新しくて、ここが両親の部屋だと言われても、僕にはまだピンと来ない。
なのに、なっちゃんがこの部屋を使おうとした時に僕は激しく反対した。
それどころか、今もまだ使わせてはいない。
自分でもその理由はよくわからない。
だけど、もうしばらくここはこのままにしておきたい。
なっちゃんは、そんな僕の気持ちを尊重してくれた。
二人のベッドの傍にあった家族写真は、たんすの引き出しにしまったままだ。
それは、まだ僕が学生の頃の古い写真……確か、なっちゃんが働き始めて間もない頃のものだ。
なっちゃんの初給料が出て、それで皆でなにか食べに行く時に、記念にって撮ったもの。
そこにはまだ小太郎はいなかったから、小太郎となっちゃんの写真は別にあって、今はそれだけが置いてある。
(さ…早くやらなきゃ、時間がないぞ。)
僕は、しんみりした気持ちを無理に振り払い、部屋の掃除を始めた。
大きな窓を開くと気持ちの良い風が入って来る。
明るくて、広くて……なっちゃんがここを使いたがるのも当然だ。
僕は手早く掃除を済ませると、リビングの隣の和室に向かった。
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