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歩いているのだ。
「みんなお待たせー! 詩織ちゃんの登場よー!」
テンションの高い叔母さんに手を引かれて、広間に足を踏み入れた瞬間に深くお辞儀をする。
「初参加で至らないところもあると思いますが、今夜はよろしくお願いします……?」
顔を上げるとそこにいたのは全員女性。お祭りは男女問わず参加するものだと思っていたからどうにも違和感がある。実は村の風習的なお祭りで男子禁制なんだろうか。
「まあまあ可愛らしい!」
「私にもこんな時期があったわぁ」
「やだ! あなたは詩織ちゃんの次に若いじゃない、なに老けてんのよ!」
「こんな子をお嫁に貰えたら最高よね! うちの息子とかどうかしら?」
五十を超えるであろうおばさま方に囲まれて、これでもかというぐらい褒めそやされる。今まで容姿について褒められることはなかったから、恥ずかしくて体がムズムズする。
「あ、あのー……男の人達はもう会場に? お手伝いとかしたいのですが……」
「あら、美咲さん収穫祭の説明してなかったの?」
「まあ! すっかり忘れていたわ」
「相変わらずおっちょこちょいねぇ。一番の年寄りの私よりボケが酷いんじゃない?」
「ボケたら梅さんのお世話になろうかしらねぇ」
オホホホと笑い合う二人。一通り笑った後、梅さんと呼ばれたお婆さんが私のために収穫祭の説明をしてくれた。
「星の収穫祭っていうのはね、女性だけが参加できるお祭りなの。主役以外は『星降りの丘』に落ちてくる『星』を収穫するだけなのよ」
「星が落ちてくる?」
「そっ! 小さーい星が空から降ってくるのよ。まあ、星っていっても宝石のような綺麗なものじゃなくて、小石サイズの隕石なんだけどね」
「隕石が降ってくる!?」
「心配しなくても大丈夫よ。私達は守られているから」
「ええ……でも……」
「それより主役なんだけど……あ、いけない時間だわ。主役に関しては実際に体験してもらった方がよく分かると思うわ。さ、皆さん参りましょう!」
全員が「はい!」と元気よく返事をし、まるで恋する乙女のような可愛らしい表情を浮かべながら星降りの丘へ向かう。みんな遠足に行くかのようにウキウキと歩いているが、唯一、新参の私だけが不安な気持ちを拭えなくて、俯きながらみんなの後をついていった。
隕石が降ってくるのにヘルメット一つないし、そもそもなぜ隕石を回収するのか……降ってくる様子を眺めるのは理解できるが、危ない場所で空を眺めるなんて到底無理だ。
逃げ出したい。
しかし、叔母さんがガッチリ腕を絡みつけているから振りほどけそうにない。
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