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不安に胸が押し潰されそうなまま、星降りの丘の入り口に到着してしまった。空を見上げると言っていた通り、星――小さな隕石が小雨のように降り注いでいた。
女性達は臆することなく丘の頂上を目指して歩き出す。私は叔母さんに引っ張られて星降りの丘に入り、いつ頭を貫くような衝撃がきても良いようにギュッと目を瞑りながら歩く。
しかし、いつまでたっても衝撃に襲われることはない。おそるおそる目を開けると、隕石は頭に当たる寸前に軌道を変えて地面に落ちていっていた。
誰かに守られているみたい。
これが第一の感想。
第二に、誰かに命令されて無理に軌道を変えているみたいだと思った。
「詩織ちゃん! ここ! ここに座ってー!」
梅さんが背もたれのない木製の古いベンチを指差している。座ったら壊れるんじゃないかと思いながらも腰を落ち着かせると、意外にも作りは頑丈のようでしっかりと私を支えてくれた。
休む暇なくここまで来たもんだから、途端に全身の力が抜ける。慣れていない着物と下駄がこんなにも辛いものとは、都会に住んでいた頃はちっとも思わなかった。貴重な経験ではあるが、もっと楽しいお祭りで経験したかった。
ハァと溜め息を付いて空を見上げると、相変わらず隕石が降り注いでいる。叔母さん達は拾いもせず談笑ばかりしているが、これのどこがお祭りなのか。ただの井戸端会議じゃないか。
せめて同年代の人がいればなぁと思った瞬間――一際大きな星が輝き出した。
「え?」
あまりの眩しさに目を細めながら観察すると、ぐんぐんとこちらに接近してくるではないか。明らかに大きいあの巨大隕石が降ってきたら、自分達はおろか、村そのものが危ないのでは?
冷静な判断力が失われようとした時、叔母さん達は「キャア!」と黄色い悲鳴を上げて、嬉しそうに、中にはスキップしながら隕石が落ちる場所に向かって駆け出した。
想定していた反応と真逆の行動をしている彼女達に唖然とする。一体どういうことなのかともう一度空を見上げてみると、巨大隕石は地上に近付くに連れてだんだん小さくなっていった。
一安心したのもつかの間、巨大隕石は光を収束させて人の形をかたどってきた。
「……はぁ?」
光が収まり現れたのは、七夕伝説によく出てくる彦星のイメージイラストとほとんど同じ衣装を纏った男性だった。
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