1人が本棚に入れています
本棚に追加
「やあやあ、僕の可愛い彼女達。今月も会いに来たよ!」
「彦星さまー! 私も会いたかったわ!」
少女のように顔を赤らめる叔母さん達。私は超常現象を目撃した衝撃のせいで脳の処理能力を超え、その場から動けずにいた。
「ところで今月の僕の彼女は……あそこで僕を見つめているお嬢ちゃんかい? 織姫ちゃんが織った着物がよく似合っているね」
目が合う。そして爽やかな笑顔を見せながら近付いてきた。
「こんばんわ、僕の彼女」
「え……?」
「詩織ちゃん、この方が彦星様よ。今から一日だけ彼氏になってくれる尊いお方なのよ。絶世の美男子でしょう?」
高身長、スラッとした鼻筋、肌のきめ細やかさ、たしかに美男子と言えるが、そんなことよりも明らかな人外の存在に戸惑いを隠せない。
これは初参加の私に配慮して、事前に祭りの詳細を教えるべきではないか。最低でも超常現象が起きるから心しておけと言ってほしかった。
「さあ詩織ちゃん。デート、しようか」
彦星も彦星で、当惑している私を気にかけることなく恋人繋ぎをしてくる。
「あの……叔母さん……」
「私達のことは気にしなくても良いわよ。もう何回も彦星様とデートしてるから嫉妬する人なんかいないわ」
ようやく声を絞り出せたのに「後は若い者同士でね!」と言って、叔母さんは彦星が歩いた道に落ちている隕石を回収しに行ってしまった。最初に回収しなかったのは彦星が踏んでいなかったからか……と、あまりのくだらなさに呆れる。
最初のコメントを投稿しよう!