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今月のデートの相手なんてしたくない!
今夜は『星の収穫祭』が行われるらしい。『らしい』というのは、私がこのお祭りに参加するのが初めてだからだ。
田舎暮らしに憧れて、両親の――主に母の静止を振り切って引っ越してきたわけだが、初日から村の人達に歓迎され「ぜひとも参加して!」とせがまれたので断るに断りきれなかった。
本来、自分はお祭りやイベントなどという浮ついた催しは好きではなく、最初は断ろうと思っていた。
しかし、引っ越しを手伝ってくれた母の妹――私にとっては叔母に当たる『比古美咲』まで加勢したせいで断れず、収穫祭に参加するはめになってしまったのだ。
「詩織ちゃん!」
「美咲叔母さん。どうしたの?」
「今日はこれを着て行きましょう。きっと詩織ちゃんに似合うわよ~」
上機嫌な叔母さんから渡されたのは豪奢な着物。一千万円は優に超えているのではと思うほど綺羅びやかな衣装だった。
「こんな豪華なの、絶対着れないわよ。どう見ても高そうな着物だし、汚したら大変じゃない。普段着で良いでしょ?」
「ちょっとぐらい汚しても怒られないわよ。おばさんが保証してあげる! ほらほら、まずは試着してみましょう」
「わわっ、押さないでってば!」
背中をグイグイ押されて叔母さんの部屋に押し込まれる。あれよあれよと着替えさせられ、人生初の着物に身を包まれた。
「あらぁ、やっぱり私の見立て通りだわ! これなら誰が見ても満足してくれるわ!」
「重いんだけど……」
「たった数時間の辛抱よ。大丈夫、終わる頃にはもっと着てたいって思うようになるから!」
「そんなこと思うわけないじゃない。あのさ、もう脱いで良い? 夜までまだ時間あるでしょ。私は身軽な格好が好きなの」
「私は今からこの格好でもいいと思うんだけどねぇ」
「脱ぐからね!」
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