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黒ノ洲真帆。
卓上高校二年、天秤座、AB型、16歳。
頭髪はブロンドのロングヘアー。耳には十連ピアス、制服はロングスカートをチョイス。とある時代を感じさせるノスタルジックなシルエットだ。
そんな出で立ちの黒ノ洲真帆。
奇抜以外の取り柄は……なし。
「うるさいなぁ、私にも取り柄の一つくらい有るから!」
「真帆の取り柄って、まさか占い?」
「でも真帆の占い、たま〜に当たるんだよねぇ」
「でもでも自分は占えないんだよねぇ」
でもって絶賛彼氏募集中。
「またそれ。それと占いは関係なくない? 結衣だっていないでしょ、彼氏」
「ふっ、真帆と一緒にしないで」
「えっ?」
「遥には言ったよね、昨日できたって」
「うん、聞いた」
「き、昨日!? 私聞いてないし」
「ごめ〜ん真帆! 遥に報告した後、真帆にも連絡するつもりだったんだけどマサキから電話があって。気付いたらもう夜中の……」
「マサキって、あの!?」
「そうですが、なにか?」
「は〜い、終了ーーー!」
「また結衣の惚気が始まる」
「えーーーっ、まだ時間あるでしょ?」
「たった今急用ができた! 帰ろ帰ろ、じゃあね〜真帆」
「バイバーイ、遥」
「ちょっとみんな待って」
「真帆、また今度占ってよ」
「OK、一回百円ね」
「精度上げてから言え!」
「はいはい、じゃあね〜美咲」
そして、黒ノ洲真帆は……。
「真帆は残らないとダメだよね? だってアレでしょ?」
そう、彼女は補習組筆頭である。
「……今日は自主休講」
「何それ」
「だから自主休講だって。スマホ壊れたからショップ行って新機種に変える」
「うそっ!? じゃあ私ひとりじゃない」
「頑張れ結衣。じゃあまた明日」
自主休講。
なんて便利な言葉なんだろう。
なぜだか後ろめたさをこれっぽっちも感じさせない魔法の言葉。全てが正当化されるパワーワード『自主休講』。
自ら発した言葉に酔う真帆であった。
(上半期、マイ流行語大賞決定!)
が、所詮は現実逃避。
世の中そんなに甘くない。
つまり、一歩たりとも真帆の足が正門から出ることはない。
なぜなら……。
(げっ、ヤマ先)
数学教師の山田が正門前に立っていた。
山田は分かっていた。
黒ノ洲真帆が補習から逃げ出すことを。
そして、真帆の正面に立った山田は白々しく言った。
「奇遇だな。お前の方から質問に来るとは」
「いやぁ、先生来るまで待てなくて……」
「感心感心。では教室へ行こうか」
「先生? 早く終わらせよ」
「……無理だ」
「はぁ」
溜息と共に魂まで漏れ出そうだ。
黒ノ洲真帆の本当の闘いはこれから始まるのだった。
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