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出来ればこのまま消えてしまいたい。
あの水晶が本当にファンシーショップの物ならどれだけ気が楽だろうか。
重たい空気に抗う様にして、真帆は恐る恐る顔を上げた。
(やっぱり怒って……!?)
占い師は、頬を膨らまし口を尖らせ、肩を小刻みに震わせていた。更に彼女は、鼻息でベールをひらひらとはためかせる程興奮していた。
「何がおかしい? お主、反省しておるのか? 顔が笑っておるぞ……」
言われて反射的に飛び上がった真帆は慌てて下を向いた。それでも尚、鼻息で揺れるベールを思い出せば、今にも表面化しそうな爆弾を抱えていた。真帆は密かに自分の太ももをつねり上げ、笑い出しそうなのを耐えている。
「ま、やってしまったものは仕方がない。……本題に戻ろう。私がお主の助けになってやろうと言うのだ拒否権はないことは今の出来事で理解できているなうむそうか素直で宜しいでは続けよう」
寛容な態度を見せるも、有無を言わさず畳み掛ける占い師に唖然とする真帆。そう言って机の下から占い師が出したのは、真っ黒の小包みだった。
占い師は真帆の前にその小包みを置くと、開封を促した。
いきなり手に取ろうとせず慎重に外見を見回す真帆。一見、ただの黒い小包みだ。次に、顔を寄せくんかくんかと臭いも調べた。これもただのよくある紙素材の臭いだった。
(うーん、あやしい)
気後れしてなかなか手を付けようとしない。見兼ねた占い師が、荒々しく小包みを掴むと、そのまま包み紙をビリビリに破った。
「あーもぅ、早く開けなよ! そう言うところ! あんたは慎重過ぎ! だから彼氏が出来ないんでしょ」
真帆は目を丸くさせ驚いた。
焦ったい真帆に苛立ちを見せ、占い師の占い師然とした態度が一変。占い師は地を露わに物言いを付けた。
「はい、これね! さ、手に取って」
占い師が言い、幾分か乱雑に箱の蓋を開けると、中にはスマホらしき物が入っていた。
形や大きさも一般的な縦長で、手の平よりやや大きめのものだ。色は全て真っ黒。包み紙から箱、そしてスマホと思しき物に至るまで何から何まで真っ黒だった。それ以外は特に変わった様子はない。
「黒のスマホ?」
「い、今なんと?」
「え? 黒のスマホって……」
「そう。お主と同じ。黒のスマホっ」
二人が顔を見合わせた一瞬、場の時間が止まった。そして、占い師の咳払いで再び時が進み出した。
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