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episode.4
いつも違う様子の八重斗が目の前に立ちはだかる。けれど、その仁王立ちはとても可愛らしいものだ。
「この前のいお兄には完敗しちゃったよ!でも、いお兄……これから本当の逆転を身体に染み込ませてあげるね」
今日も仕事を頑張ってようやく帰宅。美味しいご飯とお風呂が待ってる……はずだった。
玄関のドアを開けて家の中へ入ると、八重斗が玄関先で仁王立ちしている。八重斗の明るくもありどこか影のある声が聞こえてくる。顔をあげればあどけなさが残るも支配欲に満ちた眼差しでこちらを見つめる八重斗がそこに立っている。
「この前?ああ、アレは本当に申し訳な……っ」
「違う!!……いお兄が謝る姿より、快楽に溺れてグチャグチャになる姿が見たいんだよ?」
「またまたそんな……」
「いお兄、今更怖くなった?それとも子供のお遊びだとか軽く思っちゃってる?」
「あはは。そうだ八重斗、今晩は何食べたい?」
八重斗も性に興味を持ち、これも練習かなにかだろうと相手にせず、苦笑いしてサッとあしらう。靴を脱ぎ、上着も脱いで弟の話を聞きながら自室へと向かう。そして、どうしても話をそらしたくて晩御飯の話題を持ち込んむ。
自室でスーツから部屋着に着替えようと脱いでいる中、八重斗の低く震えた声が聞こえてくる。
「……い、お兄いぃ、っボク……」
「どうしっ……っや、え………待っ」
弟だからと侮っていた。背後を取られ、両手を後ろで手錠かけられてしまう。八重斗はその手錠を荒く引っ張り、以前両親が使っていた寝室へ連れて行く。
部屋は以前のままで、置いてある家具が別物になっている。
カーテンは締め切りで、パイプベッドに首輪付きの長い鎖、重りの着いた足枷、ディルド、バイブ、ローター、プジーといった玩具、拘束器具、アイマスクが所狭しと並べられている。
「いお兄、今日からココがいお兄とボクの愛の巣だよ!どう?気に入った?」
正気だろうか……八重斗は満足そうに笑みを浮かべている。これからのビジョンにワクワクしているのか楽しそうにも見える。
「何を……考えてる、んだ?」
「だから、言ったでしょ?たっぷりとお礼をしてあげるね、って。本当の逆転を身体に染み込ませてあげるね、って」
「いやいや、子供がこんな事……っ」
「ダメなの?いお兄は俺の写真みながら抜いていたのに。そんないお兄見てたらね……ボクもいお兄を意識し始めて、憧れのお兄ちゃんが、ボクの初恋の人になったんだよ。」
「そ、んな……」
八重斗は見たことの無い鋭い表情をしたり、時に笑ったり、落ち込んだり……たくさんの顔を見せながら訴えてくる。
このギャップにやられて転がされてきた事に漸く気づく。けれど、それはもう遅かった。
今こういう状態になっているのは突然ではなく、3年前両親を亡くし、親代わりとして弟を育ててきた。心に芽生えた弟への愛が兄弟間の在り方を歪ませて、少しずつこうなるまでの種を弟に植え付けてしまった。それが無自覚であったと八重斗に言われて初めて気づいた。
「いお兄、どうしたらいいと思う?」
そんなの、もう……
「お兄ちゃん、八重斗とずっと一緒に居るよ」
「ずっと一緒の意味……ボク、知りたいな」
だから、それは……
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