第1話『未来は明るいな』前編

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第1話『未来は明るいな』前編

 口が災いの元なんて言うけど、例えば僕の名前が書かれたテストが2枚あったと言われたらどうするか。  僕の言葉は災いとしてしか機能しないと思う。 「知らないです」とも「誰がそんなことしたんですか?」とも、言っても無駄だ。  知りたいから聞いているのだ。  かといって黙っていても何も進まない。むしろ時間がかかれば、相手のストレスが溜まっていき、悪い方向にしかいかない。  ならばどうするべきか。 「僕は毎日先生が配るお猿さん教育プログラム用プリントの束で、印刷機のすごさはわかっているつもりです。先生はいつキャノンの回し者になったんですか?」  軽い調子で場を和ませるのが得策だ。 「え、先生は調教師で、キャノンを回すんですか?」  そこに頭の弱い子がいれば最高だ。 「そうだな、100点もとれないお猿さん以下の質問に答えるなら、ノーだ」 「小清水(こしみず)、馬鹿にされてるぞ」 「え、そうなの!?」  昼休み。僕こと音標巧(おとしべたくみ)と隣にいる小清水光歩(こしみずみつほ)は、僕たちの担任の掛間典(かかりまのり)先生に呼び出されていた。
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