第1話『未来は明るいな』前編

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 僕たちが今いる進路指導室は、職員室の隣にある。基本3年生しか使用しないというイメージだ。  中央に長机が2つとパイプ椅子が2つ置いてあるが、さらに4個ほど窓側に立てかけられていた。  今は僕と小清水(こしみず)掛間(かかりま)先生の3人で、僕と小清水の向かい側に先生がいる状況だ。  棚には聞いたことのある大学や専門学校、企業名のラベルが貼ってあるファイルがびっちり詰められていた。  先生はコンコンと爪で机を叩いていおり、貧乏ゆすりまで始めた。目に見えてイライラしている様子だった。  おそらく僕の場を和ませるような発言がなければ、目の前の机は今頃ひっくり返り、教室中が血の海と化していただろう。あとは小清水が失言をしなければこの場をしのぐ事ができるのだが、気がかりな事が一つあった。 「というかなんで小清水はお弁当を持ってきてるんだ?」 「だって高校に給食はありませんよね?」  そういう事じゃない。 「そういう事じゃない。なんで呼び出しをくらって弁当を持ってきているのかと聞いてるんだ」 「お昼ご飯をみんなで()らうのかと」  馬鹿だ。 「どうやったらそんな考えになるんだ?」 「だってお昼休みはご飯を食べる時間じゃないですか?」 「ああ」 「でもお昼休みに先生に呼ばれたじゃないですか?」 「そうだな」 「ということは、一緒にお昼ご飯を食べようと誘われたのかなって」 「どうしてそうなるんだ」  先生は額に手を当てて大きなため息をついたが、どこまでが額なのか分からない頭をしている。要はそういう事だ。
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