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これ以上自体を悪化させるのも、昼休みの貴重な時間を浪費させるのも嫌なので僕は本題に切り込んだ。
「僕は2回テストを解いた記憶なんてありませんよ」
「だがな、音標のテストが2枚あるんだ。ほら」
「……これは妙ですね」
「そうだろう?」
僕と先生は顔を見合わせた。状況はこうだ。僕の名前のテストが2枚あって、小清水のテストがないので僕たちは呼ばれていた。ここまではよかった。
問題はそれぞれ右上に大きく『98』、『96』と書かれているこの点数なのだ。
「ん? ……はっ! これはみつの!」
僕と先生が小清水の方を向くが、小清水からはとんちんかんな返事が返ってくる。全身を使ってお弁当を本気で守っている姿はまるで子を守る動物のようだ。
ショートカットで顔立ちも整っており、身長が低くてマスコット的存在だ。しかし胸は大きく、きっと他の女子からしたら皮肉だろうなと思う。女子じゃないから知らんけど。
そんな食い意地のすごい奴の弁当も、いつも点数一桁台の奴がテストで『96』点も取れるはずがないのだ。だが。
「……僕の字そっくりですね」
「右上がりで途中から下線を意識し始めたようなアーチ状の車両運搬具減価償却累計額なんてお前しかいないしな。それに口の部分がある漢字は必ず右に下がる、ハネは最後しおれたひまわりのようだし、はらいに関してはハネより元気だ」
「……よく見てますね」
「毎回漢字でハネようか悩んでるからな」
がははと大口を開けて豪快に笑う。
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