第1話 恋をした相手は上司!?ー手嶋side

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長かった研修期間も終え、いよいよ初の出社日を迎えた。 同期にはブラックじゃないに決まってる、大丈夫だよって励ましたけど……実際はかなり不安だらけ。 鏡に映ったスーツ姿の自分を何度も確認する。 入社初日だからネクタイは紺。髪は結局、就活終わって調子に乗ってパーマをかけてしまったけど、今更不安に。社会人としてなっとらんとか言われないよね? 髪は黒いけど。 「い、行ってきます」 進学する度に両親や姉から頑張ってね!と言われて家を出て行ってたからか、一人で立ち向かう就職は不安だらけ。 やっぱり入社するまでは実家から通えば良かったかな? いや、甘ったれすぎるよね、それ。 父さんに自立しますって言ったのに。 ドキドキしながらも俺は会社へ。 「手嶋くん、だよね? 初めまして。課長の山岸です。今日から宜しくね」 「はい、手嶋流唯と申します。こ、これから宜しくお願いします!」 「そんな緊張しなくて良いんだよ」 出社して最初に挨拶したのは配属された部署の課長だった。課長は50代くらいの男性で穏やかそうな人でひとまず安心した。 何となく高校時代の担任の先生に雰囲気似てるし。 「はい! みんなー、注目!」 オフィスに着くと、すぐさま自己紹介をさせられた。 「本日付で入社致しました、手嶋流唯です。最初は分からない事もたくさんあり、皆様にご迷惑をお掛けするかもしれませんが、御指導ご鞭撻の程宜しくお願いします!」 このグループの新入社員、俺だけだから緊張する! 部署には11人程在籍してるって聞いたけど……確かOJTで直属の上司がつくってさっき課長が言ってたな。 「手嶋くん、ついてきて」 「は、はい!」 課長に呼ばれ、俺は課長について歩く。 「紹介するね、今日から手嶋くんの直属の上司としてついてもらう真島主任だ」 「よ、宜しくお願いしま……えっ?」 「あれ……君、確か……」 俺が課長から紹介されたのはずっと会いたかった……あの人だった。 「あ、あの時助けて頂いた手嶋です!」 「鶴の恩返し……?」 「へ?」 「良かった、就活上手く行ったんだな。主任の真島だ。改めて宜しく、手嶋くん! 入社おめでとう」 「は、はい! よ、宜しくお願いします」 俺は彼と握手を交わした。 OJTって言うからおじさんティーチャーの略だと思ってたけど、まさか真島さんが俺の上司だなんて! 嬉しくて嬉しくて、今すぐにでも跳ね上がりたい気持ちを抑えて俺は早速自分のデスクへと向かうのだった。
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