第2話 可愛すぎる子犬が我が社にやってきた。ー真島side

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けど、俺には心を開いて来たのか? 会社にいた時より表情がリラックスしている。 というか……。 「手嶋くん、口元真っ赤だぞ」 俺はトマトソースで真っ赤になった手嶋くんの口元を紙ナプキンで拭く。 「真島主任……?」 「あ、悪い! 弟が小さい時によくそうしていたからつい癖で」 「あ、ありがとうございます」 なんか世話を焼きたくなる子なんだよな。 10も下だから7つ下の弟とそんな変わらないし、雰囲気がどこかうちの実家の犬に近いし。 「あ、シャツにトマトソース……」 「あ、本当だ。大丈夫だ、後で染み抜きしてやるから」 「ありがとうございます。真島主任、お優しいですね!」 「まぁ、部下の世話を焼くのが上司の仕事だからなら。たくさん頼って良いからな? 手嶋くん」 「はいっ!」 今思い返せば、最初の頃から俺は彼に世話を焼きまくっていた気がする。 「真島主任、すみません! 会社名聞き取れなかったんですけど、真島主任宛のお電話ですっ。すみません、すみませんっ」 「ああ。さっきかけた人かもしれない。早口で聞き取りづらい人もいるから気にするな」 「はい……」 「後で取引先別リスト作って送るな。聞き取れない場合も気にしなくて良いから」 手嶋くんが慣れない仕事で上手く行かない度励ましながら頭を撫でまくり……。 「真島主任、メールの文章見て貰っても良いですか?」 「ああ。お、初めてにしてはなかなか上出来な文だな。このままメールして良いぞ」 「ありがとうございますっ。入社前に一応メールに関しても勉強したので」 「手嶋くんは勉強熱心で偉いな」 初めての業務が上手く行く度、褒めちぎり。 「手嶋くん、こないだ遅くまで残業付き合って貰ったお礼だ」 「わ、このお菓子……俺、大好きなんです! 真島主任、ありがとうございます!」 「手嶋くんが甘いお菓子大好きなんだな」 「はい、大好きです! これ食べてお仕事頑張りますね」 何かと彼に物を買い与えたり……もはや餌付け。 なんだか飼ったばかりの犬に対する扱いをずっと継続するようになってしまった。 何せ、手嶋くんは一生懸命でピュアで可愛らしいから。 あれ、俺……おかしくなってないか? だけど、ピュアの部分については俺の勘違いに過ぎなかったと実感する事になった。
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