第1話 恋をした相手は上司!?ー手嶋side

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大学4年の夏、就職活動が解禁となった。 俺、手嶋流唯(てしまるい)は自分が結局何者になりたいのか、どんな仕事がしたいのか分からないまま就活生になってしまった。 学業に専念させる為といった理由から最近では就職活動の時期が遅まっている。当の大学生達からしたら焦らされるだけで、迷惑な話。 「手嶋ー、就活どんな感じ?」 「まだ一社も内定貰えてなくて」 「そっかぁ。大手企業になると、一次面接で終わらないもんなぁ。俺は中小企業で一社内定貰ったけど、そこで決めるか悩み中」 「そっかぁ」 まぁ、俺は大手企業の書類選考や一次面接で落ちているわけなんだけど。 二次面接まですら行けていない。 ファーストフード店でアルバイトをした事もあるけど、店長がとにかく厳しくて精神的に耐えられなくて、長続きはしなかった。 そんな弱い自分が長く続けられる会社って? 今は不定期の派遣型のアルバイトをしたりしているけど、自分のやりたい事に繋がるようなアルバイトでもない。 イベントスタッフやライブ会場の警備の仕事自体は嫌いじゃないけど、 やりたい事ではない。 性格的には営業や接客業が向いていると家族から言われ、営業職や接客が発生する職業を選んでは面接してみているけど、接客についてはファーストフード店のバイトが長続きしなかったトラウマがあるし、営業についてはブラックな所だったらどうしようという不安を抱いてしまう。 その心の揺れが面接に表れ、上手く行かないのかもしれない。 だけど、このまま内定貰えないまま大学を卒業する訳には行かない。 最近では大学の就職課の担当者や家族に面接の練習を付き合って貰い、夜中になると就職試験の勉強や企業研究をひたすら行い、自分に出来る精一杯の事はするようにしている。 周りの同級生は最低1社は内定貰えるようになってきているのに、自分だけまだどこの内定も無いのはやっぱり焦る。 「るぅくん、まだ起きてるの?」 「あ、母さん……」 「なかなか上手く行かなくて不安なのは分かるけど、無理しすぎちゃダメよ?」 夜中まで企業研究をしていると、母が紅茶を持って部屋に入って来た。 「あ、ありがとう」 「いざとなったらお父さんのコネで……」 「そ、そういうのは俺、嫌だから!」 「良いのよー、そんな人たくさんいるし」 「もう! 良いから出て行ってー!」 早く就職決めて、この家を出て自立しないと……!
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