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「アイス美味しいですよー? 真島主任も食べましょう」
「ああ。はぁ、入社当初の手嶋は幻だったのか」
「あぁ。緊張して猫被ってたから、俺」
「は?」
「真島主任が本来の俺を目覚めさせたんですよ! 母さんや姉ちゃんみたいなとこあるし」
「俺かよ、原因……」
「真島主任が仰ったんですよ? 遠慮せず甘えて良いって。だから、つい……自立する気が無い訳じゃ無いんですけどね」
自立する気あるのか? 本当に。
けど、今更厳しくも出来ない。上司が厳しくしすぎて新卒が辞めてしまった話を最近聞いたばかりだし。
手嶋には辞めて欲しく無い、けど甘やかしすぎてダメ人間にもしたくない!
でも、俺以外の奴が手嶋の上司になったら嫌!
何なんだ、この異常なまでの手嶋に対する執着心。
やっぱり手嶋が実家の犬に似ているから?
あぁ、俺って指導者としてだめすぎる!
「手嶋くん、今日の飲み会楽しみだねー!」
課長が突然、手嶋に声をかけてきた。
「はい! 俺は定時で仕事終わる目安なので、先に店行けそうな人達で店向かいますね」
「ありがとう。早く始められるよう俺も仕事さっさと終わらせるからねー」
課長は申し訳なさそうな表情で言うと、自分の席に戻った。
手嶋も会社に慣れてきた頃なので、ようやくゴールデンウィーク前最終日の今日、手嶋の歓迎会を行う事となった。
「お店を手配されたのは真島主任なんですよね?」
「ああ」
「ありがとうございます。真島主任も今日は定時で終われそうですか?」
「そうだな。今日は忙しくもない」
「じゃあ、一緒にお店行けますねっ。嬉しいな」
いちいち可愛い、うざいけど!
「そういや、手嶋と飲みに行くの初めてだな」
「はい! 早く酔ってる真島主任が見たいです」
「言っとくけど、俺はめちゃくちゃ酒強いぞ?」
「そうなんですか? そう言われるとますます酔わせたくなりますね」
「絶対酔わないからな?」
「でも、本当は不安だったんですよ。他の新卒皆は早めに歓迎会してたのにうちはなかなか話が出なかったから。歓迎されてないのかなとか」
ああ、そうだよな。手嶋からしたら歓迎会遅いのは気になるわけか。
「けど、課長から聞きました。俺が会社に馴染むまで歓迎会を控えるよう真島主任が課長に話したんですよね?」
「えっ?」
「ありがとうございます。真島主任の心遣いがとても嬉しかったです」
やばい、何ドキドキしてんだ?
10も下のガキの手嶋なんかに。
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